2019 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋アドレナリン抵抗性が代謝制御に及ぼす影響とその発症メカニズムの解析
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17K09832
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野村 和弘 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (70450236)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋 / エネルギー代謝 / アドレナリンシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者は、骨格筋の運動時のエネルギー代謝制御においてβ2アドレナリンシグナルが重要な役割を担うこと、また、肥満動物の骨格筋ではアドレナリン感受性の減弱、いわば「アドレナリン抵抗性」というべき状態が生じることを見出した。 これまでに、骨格筋でβ2アドレナリンシグナルを減弱させた骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスを作製し、本マウスは運動時の体重減少率が低下し、運動時のエネルギー消費が減弱したマウスであることを明らかにしている。さらに、肥満モデルマウスの骨格筋では、β2アドレナリン受容体の遺伝子発現が低下し、アドレナリンシグナルが減弱していることを見出した。肥満モデル動物の骨格筋のβ2アドレナリン受容体遺伝プロモーター領域ではDNAが高メチル化状態にあり、これがβ2アドレナリン受容体遺伝子の発現低下によるアドレナリン抵抗性の原因となる可能性が考えられた。 またヒト骨格筋生検試料を用いた解析でも、肥満者ではβ2アドレナリン受容体遺伝プロモーター領域のDNAが高メチル化状態にあり、その結果β2アドレナリン受容体の遺伝子発現の低下をきたし、エネルギー消費を減弱させている可能性が考えられた。 以上の結果から、骨格筋のβ2アドレナリンシグナルは、個体レベルでのエネルギー代謝制御に重要な役割を担うと考えられ、様々な病態のヒト骨格筋試料を用いた解析を通じ、モデル動物で得た知見のヒトへの外挿性の検証をさらに進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋アドレナリンシグナルの減弱や増強が個体レベルでのエネルギー代謝に与える影響や「アドレナリン抵抗性」の発症機構を分子レベルで解析をすすめた結果、骨格筋におけるβ2アドレナリン受容体を介した情報伝達が、全身の代謝制御のみならず肥満の病態形成にも関与することを明らかにした。これは当初の研究目的であった、骨格筋アドレナリン抵抗性が代謝制御に及ぼす影響とその発症メカニズムの解析という点で、十分な成果と思われ、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋のアドレナリンシグナルの生理的意義と肥満のみならず加齢によって生じる「アドレナリン抵抗性」の発症機構と病理的意義についての解析を進める。これまでに行ってきたモデルマウスの代謝表現型の解析に加え、加齢による筋量減少やトレーニングによる筋量増加などの解析も行う。さらに、肥満、2型糖尿病、サルコペニアなど、様々な病態のヒト骨格筋試料を用いた解析を通じ、モデル動物で得た知見のヒトへの外挿性の検証を進める。
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Causes of Carryover |
当初の予定より実験動物の使用匹数が少なく済んだため繰越金額が生じた。次年度使用額は再現性を確認するための実験動物購入費、および消耗品購入費用に充てる予定である。
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