2018 Fiscal Year Research-status Report
エピゲノム情報を基にしたヒト造血幹細胞の自己複製機構の解明を目指した研究
Project/Area Number |
17K09899
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高山 直也 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10584229)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ヒト造血幹細胞 / オープンクロマチン解析 / CTCF |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、これまで得られた、高純化した造血幹細胞を含むヒト血液細胞集団の網羅的なエピゲノム解析(オープンクロマチン解析、DNAメチル化解析)の結果をもとに、造血幹細胞増幅に関わる因子の探索を推進している。造血幹細胞と他の前駆細胞集団を差別化するクロマチン状態の違いから、CTCFを見出し、shRNA法を用いた遺伝子ノックダウン実験から、現在までにCTCFが、ヒト造血幹細胞特異的な分化開始点を制御していることを見出している。本研究では、①CTCFはどのように幹細胞特異的な静止期脱出機構を制御しているのか、 ②エピゲノム解析から得られているCTCF以外に同定されている他の候補遺伝子は、自己複製に関与するのか?を明らかにすることを目的としている。H30年度は、以下の結果が得られた。 A) CTCFの標的因子を同定する目的で、オープンクロマチン状態が近似しているOCI-AML2白血病細胞株で、ATAC seq, CTCF-ChIP seq, Chromatin conformation capture (HiC)法を行った。 B) CTCF-ChIP, HiCの結果から、LT-HSC活性化・分化開始に関与が想定される367個のループを同定した。 C) これらのループは遺伝子発現に対して抑制的なループであり、幹細胞から分化する最初の過程で形成され、幹細胞制御に関わる細胞周期、ストレス応答、代謝などのパスウェイ遺伝子発現を抑制する可能性が見出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CTCF-ChIP seq, Chromatin conformation capture (HiC)法などを新たに解析したことにより、CTCFの幹細胞制御因子への抑制ループ形成により、分化が開始されるという新たな可能性を見いだすことができた。CTCFによる抑制ループで制御される遺伝子は、細胞周期、ストレス応答、代謝など幹細胞制御に重要なパスウェイを担っており、CTCFはそれらの遺伝子を直接変化させる重要なハブ遺伝子であることが明らかになった。申請書に記載している通り、CTCF-ChIPやChromatin conformation capture法の解析を進められることができ、標的制御機構が徐々に明らかになってきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度に行ったChIP及びHiCのデータから細胞周期、ストレス応答、代謝遺伝子、免疫応答などのパスウェイが幹細胞制御遺伝子候補として同定された。これらの遺伝子の多くはヒト造血幹細胞での制御が現時点では不明であるが、ヒト造血幹細胞が特異的な細胞周期状態、代謝応答、ストレス応答機構を有している可能性が示されたため、2019年度は阻害剤や遺伝子改変により、上記機構の理解を進める。
|