2018 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変同種リンパ球による移植後再発腫瘍治療モデル開発と安全性基盤の確立
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17K09949
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
俵 功 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80378380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 裕明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40374673)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 造血幹細胞移植 / 遺伝子改変リンパ球 / ドナーリンパ球輸注 / 移植片対宿主病 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、MHC一致(BALB/c→CD2F1)および半合致(BALB/c→CB6F1)マウス造血幹細胞移植モデルを用いて、BALB/cバックグラウンドDUC18・TCRトランスジェニックマウス由来T細胞による腫瘍抗原(mERK2)特異的DLIの、抗腫瘍効果およびGVHDへの影響を検討した。移植後腫瘍再発モデルとしては、既存の肉腫細胞株(CMS5a)を用いた。DUC18T細胞による抗腫瘍効果は、行った全てのDLI実験条件で認められたが、GVHDについては移植モデル、DLI実験条件によって異なる結果を得た。 また、臨床ではDLIが難治性造血器腫瘍の再発時に実施が検討されることに鑑み、同種抗原および腫瘍特異的抗原を発現するF1マウス血液系腫瘍細胞株を樹立を試みた。まず、本研究における腫瘍抗原モデルとなるmERK2を恒常的に発現するBALB/cバックグラウンド・トランスジェニックマウス(mERK2-Tg)と、他系統(C57BL/6およびDBA/2)マウスとの交配によりCB6F1(C57BL/6 x BALB/c)およびCD2F1(DBA/2 x BALB/c)マウスを得た。次に、これらF1マウスの脾細胞が、in vitroでDUC18T細胞を刺激できることを確認した。この結果はF1マウスがk片親由来のmERK2を発現していることを意味している。さらにマウスへの非致死量X線の反復照射により、胸腺、脾臓、骨髄にリンパ系腫瘍を誘発し、同種抗原と共に腫瘍特異抗原を発現する血液系(リンパ系)腫瘍細胞株を樹立を試み、長期培養可能な株を得た。現在クローニングを行っており、いくつかのクローンが得られており、それらのフェノタイプを解析するとともに、in vivoでの生着確認を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
造血幹細胞移植は、難治性造血器腫瘍に対する根治的治療法として実施されるが、移植後腫瘍再発の可能性がある。ドナーリンパ球輸注(DLI)は移植後再発腫瘍に対して一定の効果が期待されるが、同種免疫応答によるGVHDの増悪が懸念されるため、GVHD の増悪を伴わない移植片対腫瘍(GVT)効果を増強した治療法として、遺伝子改変同種リンパ球の輸注療法の開発が期待される。 本研究は、腫瘍特異的T細胞受容体遺伝子を導入したドナーリンパ球輸注(DLI)を、安全に実施するための基盤開発を目的としており、現在、マウスを用いた前臨床研究を行っている。3年間の研究計画では、初年度においてMHC半合致移植におけるDLIモデルを確立するとともに、MHC一致造血幹細胞移植(BALB/c→CD2F1)・DLIモデルを確立すること、次年度においては、同種抗原と共に腫瘍特異抗原を発現する血液系(リンパ系)腫瘍細胞株を樹立し、より臨床に近い血液系腫瘍細胞株を用いて(腫瘍を経静脈的および皮下接種する)移植後再発・DLIモデルを確立することとした。 初年度の計画は予定通り進み、MHC一致造血幹細胞移植・DLIモデルを確立した。次年度計画の同種抗原と共に腫瘍特異抗原を発現する血液系(リンパ系)腫瘍細胞株の樹立は、腫瘍の誘発および細胞株の樹立までは進んでおり、現在同種抗原、腫瘍抗原の発現を検討中である。 上記進捗状況より、おおむね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
同種抗原(MHC)と共に腫瘍特異抗原(mERK2)を発現する血液系(リンパ系)腫瘍細胞株の樹立については、同種抗原の発現はフローサイトメトリー法によるMHCの検出により行う。腫瘍抗原の発現については、PCR法によるERK2遺伝子の増幅と、その産物の配列解析により行う予定である。 それらの腫瘍細胞株を用いて、MHC一致および半合致マウス造血幹細胞移植・移植後再発モデルを作製し、DUC18T細胞による腫瘍特異的DLIを実施し、抗腫瘍効果およびGVHDへの影響を検討する。また既存の肉腫細胞株(CMS5a)を用いた研究も継続する。 三重大学にはコンジェニックマーカー・CD90.1発現BALB/cマウス、CD45.1発現BALB/cマウスが導入されており、コンジェニックマウスとの交配により、CD90.1発現DUC18も得られている。これらを用いて造血幹細胞移植・腫瘍再発・DLIモデルを構築することにより、GVHD標的臓器および腫瘍局所において、移植骨髄に由来するCD45.1陽性細胞と、DLIに用いたCD90.1陽性細胞をモノクローナル抗体で識別可能となり、免疫蛍光法やフローサイトメトリー法を用いて追跡し、輸注細胞の動態を明らかにする。またDLI前後の宿主血液中のサイトカイン濃度は、フローサイトメトリー法を応用した多項目タンパク質測定キットにより測定する予定である。 これらの実験より集積した結果を総合的に検討し、DLIに用いる輸注細胞および宿主側のGVHD病態を修飾する因子を明らかにする。また、GVHDを修飾する因子を標的とした介入、すなわち特異的細胞群の除去や、抗体や低分子阻害薬などを用いたサイトカインシグナル、細胞移動、接着能などの修飾により、遺伝子改変同種細胞を用いたGVHDの増悪を伴わない、より安全な腫瘍特異的DLIの方法を検討する。
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Causes of Carryover |
計画的に使用したが、試薬等の割引が得られたため次年度使用額が生じた。 次年度使用(予定)額は少額であり、今年度の試薬等の購入経費に充てる予定である。
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