2017 Fiscal Year Research-status Report
強皮症の線維化・血管リモデリングを誘導する新規末梢血単球サブセットの同定
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17K09989
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
桑名 正隆 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (50245479)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膠原病 / 強皮症 / 単球 / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
強皮症(SSc)は現状で残された難治性疾患の一つで、非可逆的な線維化・血管病変を特徴とする。これまで病態に関わる様々な分子や細胞が示されているが、全ての病変を一元的に説明しえるメカニズムの同定に至っていない。本研究では、『SSc患者では、転写因子レベルでの異常により誘導された単球サブセット(以下M2-SSc単球)が病変部組織にリクルートされ、線維促進因子の産生、筋線維芽細胞への分化転換、血管新生抑制を介して病態形成の初期段階で重要な働きをする』という仮説を検証することでSScの病態を解明することを目的としている。今年度はSSc患者末梢血中に存在するユニークな単球サブセットを同定するため、転写因子AP-1構成成分(Fra-1、Fra-2、c-Fos、FosB、c-Jun、JunD、JunB、ATF-2、ATF-3、B-ATF)に着目し、その発現レベルをSScおよび健常人の末梢血からモノクローナル抗体結合磁気ビーズにより分離した高純度CD14+単球を用いて比較した。定量的PCRを用いてSSc48例、健常人36例で比較すると、Fra-1、Fra-2、c-Fos、FosB、ATF-2、ATF-3、JunB、JunDの発現レベルが高かった。蛋白レベルでの発現比較では同様の傾向がみられたが、統計学的に有意にSSc発現が亢進していた転写因子はFra-1のみであった。特に末梢血単球におけるFra-1発現が高い例は発症早期のびまん皮膚硬化型が多かった。この結果は、皮膚硬化、肺間質の線維化、肺動脈リモデリングを自然発症するFra-1を高発現するトランスジェニックマウスで得られた知見をヒトで再現する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SSc患者末梢血中に存在するユニークな単球サブセットを同定するため、転写因子AP-1構成成分(Fra-1、Fra-2、c-Fos、FosB、c-Jun、JunD、JunB、ATF-2、ATF-3、B-ATF)に着目し、その発現レベルをSScおよび健常人の末梢血からモノクローナル抗体結合磁気ビーズにより分離した高純度CD14+単球を用いて比較した。まず、パイロットとしてSSc20例、健常人14例を用いてPCR後のデンシトメトリーでmRNA発現レベルを半定量的に比較すると、SScでFra-1の発現が高く、c-Fosの発現が低い結果が得られた(P = 0.03、0.008)。この結果を検証するために、定量的PCRを用いてさらに症例数を増やして異なる対象で比較したところ、SSc48例で健常人36例に比べて、Fra-1、Fra-2、c-Fos、FosB、ATF-2、ATF-3、JunB、JunDの発現レベルが高かった。c-Fosの発現が逆であったが、エクソン3を含むバリアントの発現のみがSScで低いことが説明可能であった。蛋白レベルでの発現比較ではSScで健常人に比べてFra-1、Fra-2、c-Fos、FosB、ATF-2、ATF-3、JunB、JunDの発現が高い傾向があったが、統計学的に有意なのはFra-1のみであった。特に末梢血単球におけるFra-1発現が高い例は発症早期のびまん皮膚硬化型が多かった。
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Strategy for Future Research Activity |
SScに特有の単球サブセットの候補としてFra-1高発現CD14+単球が同定された。今後はmRNAアレイを用いて、これらサブセットで発現が高いサイトカイン、ケモカイン、M1/M2マーカーを同定し、さらなる詳細な機能解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
年度内にアレイ関連の高額な試薬購入を予定していたが、研究結果に基づいた試薬選定に時間を要してしまい購入が年度をまたいでしまったため。
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