2017 Fiscal Year Research-status Report
Rab27関連分子によるサイトカインシグナル制御機構の解明
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17K09994
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
奥西 勝秀 群馬大学, 生体調節研究所, 講師 (50401112)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サイトカイン / アレルギー / Rab27 / 調節性分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年アレルギー反応における重要性が明らかにされたサイトカインとして、上皮性サイトカインIL-33が挙げられる。アレルギー反応の病像の本態である抗原特異的な好酸球性炎症の形成には、メモリーTh2細胞の中でも、IL-5を特異的に産生し、CD44highCXCR3lowCD62Llow のパターンを示す病原性Th2細胞の存在が必須である。最近、この病原性Th2細胞への分化及びその活性化がIL-33により誘導されることが明らかになった。すなわち、IL-33は、アレルギー反応の病態形成上、エフェクターサイトカインであるIL-5と比べより上位中枢で作用しており、IL-33のシグナル経路の制御機構を解明することで、アレルギー反応のより根本的な制御機構を理解することができると考えられる。そこで、本研究では、まずこのIL-33シグナルに着目して、その制御機構におけるRab27関連分子の役割を検討することとした。 IL-33は、マウスでは主にII型肺胞上皮細胞に発現している。そこで、II型肺上皮細胞におけるRab27関連分子の発現を調べ、発現を確認した分子のIL-33分泌への関与を検討した結果、2つの分子に関して、その欠損によりII型肺胞上皮細胞からのIL-33の分泌が亢進することを、in vivo およびex vivo の実験で確認した。また、いずれの分子の欠損マウスにおいても、マウス喘息モデルにおいて喘息様気道炎症が増悪することを確認した。さらに、そのうちの一つの分子に関しては、IL-33反応性病原性Th2細胞にも発現を認め、その欠損は、病原性Th2細胞のIL-33に対する反応性を亢進させた。 以上から、Rab27関連分子(のうち少なくとも一部)が、IL-33の分泌やIL-33への反応性を制御しており、その欠損は、IL-33シグナルやアレルギー反応の異常亢進につながる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに申請者が独自に蓄積してきた十分量の予備的知見を基に、H29年度には、綿密に実験計画を立てることができた結果、無駄なく、非常に効率的に研究を遂行することができた。そして、Rab27関連分子のうち少なくとも2分子がIL-33シグナルの制御に関与しており、その破綻がアレルギー性気道炎症の増悪につながることを明らかにすることができた。更に、各分子の遺伝子変異マウスでのアレルギー性気道炎症増悪という表現型におけるIL-33の重要性を解析する上で、必要不可欠と考えられる、各分子とIL-33の両方の遺伝子が欠損した(double knockout: DKO)マウスの作成にも成功し、既に、それらを用いた解析を開始している。また、上記2分子の生理作用の分子基盤を解明するための予備実験も既に行っており、大変興味深い知見を集積しつつある。 以上の成果を踏まえると、本申請研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度までに得られた知見を踏まえ、H30年度にはまず、IL-33シグナルへの関与が明らかになったRab27関連分子に関して、IL-33シグナルにおけるその重要性や、その生理作用の分子基盤を明らかにするために、次の検討を行う予定である。1)IL-33シグナルにおける各分子の重要性の確認:各分子の遺伝子変異マウスで認められる喘息モデルにおけるアレルギー性気道炎症の増悪がIL-33依存的かどうかを、各分子とIL-33のDKOマウスを含めた各種遺伝子変異マウスを用いて、検討する。その際、適宜、骨髄キメラマウスの系や、細胞移入の系も利用する。2)II型肺胞上皮細胞におけるIL-33分泌における各分子の機能解明:IL-33は、主に、II型肺胞上皮細胞が障害を受けた時に分泌されると考えられている。そこで、各分子遺伝子欠損マウスでのIL-33分泌亢進と細胞傷害との関連を、in vivoおよびex vivoの実験系で評価する。更に、肺上皮細胞のセルラインに、IL-33や当該Rab27関連分子を強制発現させた際の、各蛋白質の細胞内局在や、IL-33分泌の変化を検討する。3)病原性Th2細胞における機能解明:病原性Th2細胞に発現を認め、その欠損がIL-33への反応性を亢進させることを確認済みのRab27関連分子に関して、当該Rab27関連分子欠損マウスから取り出した病原性Th2細胞と野生型マウス由来の細胞とで、IL-33受容体の発現量やその細胞内トラフィック、ならびに、IL-33受容体下流の細胞内シグナル伝達経路を制御しうる因子(例:各種kinase活性など)の差異などを検討する。 また、上記2分子以外のRab27関連分子に関しても、それらが、ある種のサイトカインシグナルを制御しうることを示唆する予備的知見を得ており、H30年度には、これらの分子に関する解析も進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)これまでの予備的知見を基に、H29年度には、非常に綿密な実験計画を立てることができた結果、無駄なく、極めて効率的に研究を遂行できた。また、H29年度に使用した実験系の多くは、申請者が既に確立済みの実験系であり、その点からも、効率よく実験を行えた。さらに、科研費以外の資金も一部使用可能であった。以上から、次年度使用額を生じた。一方、H30年度には、次に述べるように、今年度以上に多くの実験を行う予定であり、今回生じた次年度使用額を、それらに使用する予定である。
(使用計画)H30年度には、まずは、前述の2分子に関して、その機能の分子基盤を解明すべく、数多くの実験を行う予定であるが、その際、多くの試薬や実験動物を使用する。また、新たな実験系を確立する必要もあり、その場合、試薬も新たに購入する必要がある。更に、これまでに得た知見の一部は、論文投稿間近であるが、投稿後のリバイス時に、数多くの実験を行う必要が生じる可能性が高い。その他、上記2分子以外のRab27関連分子に関しても、IL-33とは異なるサイトカインのシグナル伝達機構への関与を示唆する知見を得ており、H30年度には、これらの分子に関する解析も進めたい。以上から、H30年度には多くの費用が見込まれており、次年度に繰り越しとなった金額をそれらに使用する予定である。
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