2018 Fiscal Year Research-status Report
Rab27関連分子によるサイトカインシグナル制御機構の解明
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17K09994
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
奥西 勝秀 群馬大学, 生体調節研究所, 講師 (50401112)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Rab27 / サイトカイン / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年著増しているアレルギー疾患であるが、その本態は、抗原特異的Th2応答である。抗原特異的Th2細胞は、樹状細胞から抗原が提示される際に、(主に)好塩基球からIL-4が供給されることで誘導される。一方で、このT細胞と樹状細胞との相互作用の際に、樹状細胞から産生されるIL-12は、抗原特異的Th1細胞を誘導する方向に作用する。また、アレルギー反応の病像の本態である好酸球性炎症の形成においてIL-5が非常に重要な役割を果たすが、メモリーTh2細胞の中でもCD44highCXCR3lowCD62Llow のパターンを示す病原性Th2細胞と呼ばれる細胞が、特異的にIL-5を高産生し、更に、この病原性Th2細胞への分化及びその活性化が、IL-33により誘導されることが、最近明らかになった。すなわち、IL-4、IL-12、およびIL-33は、アレルギー反応の病態形成上より上位中枢で作用しており、本研究では、まずこれらのサイトカインに着目して、その産生やシグナル制御機構におけるRab27関連分子の役割を検討した。そして、11種類あるRab27エフェクター分子のうち、一つの分子は好塩基球からのIL-4の産生を正に制御しており、その欠損により好塩基球からのIL-4産生が低下してTh2応答の誘導が低下するのに対し、別の分子は、樹状細胞からのIL-12の産生を正に制御し、その分子の欠損により、Th1応答が減弱し、Th2応答が亢進することを確認した。更に、他の分子は、病原性Th2細胞に高発現し、病原性Th2細胞のIL-33に対する反応性を負に制御しており、その欠損は、IL-33刺激時の病原性Th2細胞からのIL-5産生を亢進させ、その結果、アレルギー性気道炎症を増悪させることを確認した。 以上から、Rab27関連分子が、Th2応答の成立において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに申請者が独自に蓄積してきた十分量の予備的知見を基に、H30年度には、綿密な実験計画を練ることができた結果、無駄なく、非常に効率的に研究を遂行することができた。そして、Rab27関連分子のうち少なくとも3分子がTh2応答の誘導に関与しており、その破綻は、Th2応答の変化につながることを明らかにした。上記3分子に関しては、全て分子の欠損マウスを保有しており、また、各分子の生理作用の分子基盤を解明するための実験も既に行っており、大変興味深い知見を集積しつつある。更に、一部の知見に関しては、既に論文投稿を行い、現在、リバイスの為の追加実験を行っている状況である。 以上の成果を踏まえると、本申請研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度までに得られた知見を踏まえ、R1年度にはまず、Th2応答誘導への関与が明らかになったRab27関連分子に関して、その生理作用の分子基盤を明らかにするために、当該免疫担当細胞をマウスから単離し、次の各種検討を行う予定である:1) 各分子の細胞内局在の同定:各種免疫染色や顕微鏡を使用。内因性の蛋白質のみならず、タグ付きの各分子を外因性に導入した系でも検討を行う。2) 各種サイトカイン受容体の発現レベルや局在の評価:例えば、好塩基球上のIL-3受容体、樹状細胞上のTLR4受容体や、病原性Th2細胞上のIL-33受容体の発現レベルやその局在を、無刺激時および各種刺激時で、野生型マウス由来の細胞と、各分子欠損マウス由来の細胞とで比較検討する。3) in vivo での評価:マウス喘息モデルにおいて、各種免疫担当細胞の移入や除去が、アレルギー性気道炎症の表現型に与える影響を評価する。 前述の様に、一部の実験は既に開始しており、各分子の作用機序を明らかにしつつある状況である。
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Causes of Carryover |
(理由)これまでの予備的知見を基に、H30年度には、非常に綿密な実験計画を練ることができた結果、無駄なく、非常に効率的に研究を遂行できた。また、H30年度に使用した実験系の多くは、申請者が既に確立済みの実験系であり、その点からも、効率よく実験を行えた。さらに、科研費以外の資金も一部使用可能であった。以上から、次年度使用額を生じた。一方、R1年度には、次に述べるように、多くの実験を行う予定であり、今回生じた次年度使用額を、それらに使用する予定である。
(使用計画)R1年度には、まずは、前述の3分子に関して、その機能の分子基盤を解明すべく、数多くの実験を行う予定であるが、その際、多くの試薬や実験動物を使用する。また、新たな実験系を確立する必要もあり、その場合、試薬も新たに購入する必要がある。更に、これまでに得た知見の一部は、前述の様に既に論文投稿を行っており、そのリバイスの為に、数多くの追加実験を行う必要が生じている。以上から、R1年度には多くの費用が見込まれており、次年度に繰り越しとなった金額をそれらに使用する予定である。
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