2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of iron metabolism by hepcidin and its role in acute phase of sepsis.
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17K10015
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
茂呂 寛 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (40509452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 俊範 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (40361919)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄 / 敗血症 / ヘプシジン |
Outline of Annual Research Achievements |
新潟大学医歯学総合病院で血流感染症と診断された50症例を対象に、急性期および回復期の血液検体について、血中の鉄濃度とヘプシジン濃度を測定し、その経時的推移を確認した。その結果、血清鉄濃度は感染症の発症直後には急激な低下を認め、病態の回復に伴い回復するパターンを示した。これと反対に、ヘプシジン血中濃度は急性期に急激な上昇を認めた後で低下しており、このヘプシジンの作用により、血中の鉄濃度が調整されていることが示唆された。同時に、こうした血中鉄濃度の低下は、微生物側の鉄獲得を阻止する作用に結びつくことから、宿主側の自然免疫応答の一環とも理解される。一方、血流感染症の症例を敗血症群と非敗血症群に分け、両群における鉄およびヘプシジン濃度を比較したが、両者に有意な差は認められなかった。この点から、多層的な調節を受けているヘプシジンの産生のうち、感染症の場面では炎症性の刺激がメインとなって伝わり、病勢とは無関係に細胞外鉄濃度を急速に引き下げようとする宿主側の作用が推察される。炎症刺激において、ヘプシジンはIL-6刺激によって肝細胞で産生されるが、同様のシグナル伝達経路を持つCRPとヘプシジンは感染症の経過中に似た挙動を示し、それぞれの血中濃度は有意な相関を示した。一方、CRPに先行してヘプシジンが上昇していることから、生体側にとってヘプシジンによる細胞外鉄濃度の低下作用は、感染症の急性期により優先度が高い可能性も考えられた。このように、感染症の急性期には鉄およびその調節因子であるヘプシジンはダイナミックな変動を示すことが明らかとなり、診断および治療の面から、魅力的な対象と考えられた。この領域に関するさらなる解明が進み、血流感染症、ひいては敗血症における新たな診断、治療の選択肢が得られることを期待したい。
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