2017 Fiscal Year Research-status Report
血清中におけるインフルエンザウイルス亜型間交叉反応性中和抗体の検出法の確立
Project/Area Number |
17K10037
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大島 信子 藤田保健衛生大学, 産学連携推進センター, 講師 (60387694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 交差反応性抗体 / 検出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々がこれまでに単離してきた交差反応性抗体の性質を利用し、様々なタイプのインフルエンザウイルスに幅広く交差反応する抗体を血清中から検出する方法を検討する。本年度は、A型インフルエンザウイルスグループ1のウイルス株を対象とし、ELISAでの実験系を構築するために、抗原(ウイルスワクチン液)の固相化濃度と、使用する血清及び2次抗体の希釈濃度及びブロッキング剤の検討を行った。使用した血清は、同一ドナーからのインフルエンザワクチン接種前後に採取しており、段階希釈した抗原それぞれに対しタイトレーションカーブを描くことで評価を行った。その結果、バックグラウンドが出にくいスキムミルクをブロッキング剤として使用することを決定し、かつ、ワクチン接種前後の両血清の活性が1.0-2.0の間に収まる範囲内での抗原濃度及び血清希釈濃度を複数点候補として決定した。さらに、2次抗体の希釈濃度を決定するため段階希釈を行い、ワクチン接種前後での活性の差が検出可能な範囲内での2点の希釈倍率を決定するとともに、最終的に抗原濃度及び血清希釈濃度もそれぞれ2点決定した。過去に単離した交差反応性抗体共存下での血清のワクチン株への結合活性減少を検出することを目的としていることから、予備実験で決定した条件で交差反応性抗体を添加したところ、活性の減少が検出できた。しかしながら、再現性を得るまでには至っておらず、さらなる条件検討が必要である。 インフルエンザウイルスに対する中和抗体は流行株にのみ効果があると考えられがちであるが、グループ1に属する複数の亜型ウイルスに幅広く交差反応する中和抗体が人の体内に存在することは、世界的にも多くの報告がなされている。そのような抗体を血清中から検出する方法は非常に有用であり、安定した再現性をいかに取るか、また、別の角度からも検出する方法を考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
血清中の抗体検出法をELISA法で検討するにあたり、使用する抗原の濃度、血清希釈倍率、2次抗体の選定及びその希釈倍率の評価に時間を要した。血清はH1N1インフルエンザワクチン(2009年パンデミック株)接種前後に採取したものを両方とも評価し、ワクチン接種前後における結合活性の差(倍率)が毎回ほぼ同じでかつ安定して検出できる条件を設定する必要があると考え、この条件を整えるのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が単離した、グループ1の複数のウイルス株に対する交差反応性抗体共存下での結合活性の低下をどのように検出するかが大きな課題である。競合ELISAの系での検討を進めていくにあたり、抗原濃度、血清濃度、2次抗体濃度、競合抗体濃度を、再現が取れるように設定することが重要な点で、それを詰めていく必要がある。一方で、血清中には、中和活性がある抗ヘマグルチニン(HA)抗体だけではなく、他のインフルエンザウイルスタンパクに対する抗体も存在しており、ウイルスワクチン液を抗原に使用したときにはHA以外にも反応するという問題点が生じる。これを回避するために、抗原としてリコンビナントHAを使用して血清中の抗HA抗体のみを検出する系を構築する方法も検討する必要があると考える。また、競合ELISAの系だけでなく、サンドイッチELISAなどの系を利用して、別の検出法につなげることができるかどうかの検討を試みる。
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Causes of Carryover |
本年度では、交差反応性抗体の存在下における血清の結合活性測定の実験が予備実験レベルで終わってしまっていることから、さらなる条件検討時にかかる費用が未使用となった。また、リコンビナントヘマグルチニンの作製にかかる費用も未使用となっている。大学の調達システムにより、当初予定していた使用額を減少することができていることからも、本年度未使用額が発生した。 次年度は、本年度当初予定していた交差反応性抗体の存在下における血清の結合活性の条件検討を行うとともに、リコンビナントヘマグルチニンを抗原とする系の構築を準備し、実施する予定であり、この実験に前年度未使用額を使用する計画である。
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