2018 Fiscal Year Research-status Report
クラリスロマイシン耐性肺MAC症に対する新たな治療薬の開発
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17K10041
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中田 登 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 主任研究官 (70237296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 仁彦 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (20569694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MAC症 / クラリスロマイシン / 薬剤耐性 / マクロライド |
Outline of Annual Research Achievements |
非結核性抗酸菌、特にMycobacterium avium complex (MAC) に属するM. aviumとMycobacterium intracellulareによる肺MAC症患者が本邦で急増しているが、クラリスロマイシン(CAM)以外の治療薬は効果が限定されており、またCAM耐性肺MAC症患者の予後は多剤耐性結核患者のそれに匹敵して悪いことが示されていることから、新たに有効な治療薬を開発することが切望されている。これらのMACに有効な新規薬剤を開発するため、まずMAC臨床分離株の薬剤耐性獲得状況を調べた。4医療機関から合計44菌株のCAM耐性M. aviumの供与を受け、23S rRNA 遺伝子上のDomain V における変異の保有状況を調べた。23S rRNA 遺伝子ホットスポット領域をPCR増幅し、ダイレクトシークエンシングにより塩基配列を決定すると、22% (10/44)では野生型と変異型の配列が混在していることがその波形から示唆された。このことは、マクロライド耐性集団と感受性集団が臨床試料中に共存していることを示唆している。一方、44検体中9株(20%)では、CAM耐性であるにもかかわらず変異が見られなかったことから、これらの菌株ではホットスポットとは異なる未知の部分に変異が生じている可能性が示唆された。次に、新規合成マクロライド化合物(avermectin誘導体)22種についてCAM高度耐性M. avium 24株に対する抗菌効果を調べるため、MIC測定を行った。4種の化合物においてMICが8μg/ml以下と効果が認められた。これら化合物には構造上の類似性が見られたことから、共通する構造を基に新たな化合物の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M. avium におけるCAM耐性機序としては23S rRNA 遺伝子上のDomain V における変異が知られている。Domain V上の2058番、あるいは2059番の位置に点突然変異が生ずるとその立体構造に変化が生じ、CAMはリボゾームに結合できなくなり耐性化するが、収集したCAM耐性臨床分離株は、当該領域に変異を持つものと持たないものが混在しており、これは新規薬剤の効果を評価する上で大変都合が良い。これらの菌株にCAM感受性の菌株を加えて、新規合成した様々なマクロライド系薬物・アベルメクチン系薬物に対する感受性をin vitroのMIC測定法を用いて検証しており、多様な臨床株に対する効果が検証できている。さらに、ある程度の抗菌効果が認められる化合物が複数見つかっており、これらの化合物に構造の共通性を見出せることから、今後の改良に関しても期待が持てる。
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Strategy for Future Research Activity |
抗菌効果が見られた新規化合物に共通する構造を踏まえ、新たに多数の類似化合物の試験を行う予定である。また既に効果の認められた4種類の化合物に関しては、THP-1細胞を使用した培養細胞系を使用し、これに菌が感染した場合にも有効に作用するかどうかを検討する。培養細胞を用いた感染系においても効果が認められた化合物については、動物実験での有効性を調べ、新規治療薬としての可能性を検討する予定である。また、CAM耐性で23S rRNA 遺伝子のDomain Vに変異の見られなかった菌株についてはゲノムシーケンシングにより、耐性の原因となっている因子の解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度は、予想以上に消耗品の消費が少なく、今後に予想される試験・解析にかかる費用のため倹約をおこなったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度に関しては、培養細胞を利用した試験や、ゲノム解析に多くの費用がかかるため、主にこれに助成金をあてる予定である。
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Research Products
(2 results)