2018 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of the mechanism of effectiveness of the oral cancer vaccine a platform expressing a cancer antigen
Project/Area Number |
17K10109
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋井 佳子 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60343258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 利朗 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (70335446)
片山 高嶺 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (70346104)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腸管免疫 / WT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bifidobacterium longumにGNB/LNB トランスポーター基質結合タンパク質(GLBP)を用いてWT1 遺伝子の一部(ほぼ全域)を融合させた、WT1発現ビフィズス菌を作成した。WT1蛋白を強発現させたマウス白血病細胞株であるC1498をマウスに移植した。腫瘍の生着を確認後、経口ゾンデを用いてWT1発現ビフィズス菌を内服させると従来のWT1ペプチドワクチンより有意に強い腫瘍縮小効果が認められた。今回、このWT1発現ビフィズス菌の腸管での動態および腸管免疫を利用した抗腫瘍効果の機序を明らかにした。マウスの腸管組織をB.Longum 特異的なプローブを用いてFISH法により染色したところ、小腸腸管腔のみにB.Longumを検出し、大腸では見られなかった。またパイエル板において活性化樹状細胞を検出した。このことからWT1発現ビフィズス菌は小腸で取り込まれパイエル板で樹状細胞を活性化し、腸間膜リンパ節でリンパ球中のIFN-γ産生が亢進していたことから腸間膜リンパ節で抗腫瘍効果をもつリンパ球が増殖していることが明らかになった。またマウスモデルにおいてもビフィズス菌単独<GLBPのみを発現させたビフィズス菌においてもWT1発現ビフィズス菌より弱いが樹状細胞の活性化がみられた。さらにWT1発現ビフィズス菌、ビフィズス菌単独、GLBPのみを発現させたビフィズス菌をヒトPBMNCと共培養したところ、ヒトWT1特異的キラーT細胞が誘導された。このことからビフィズス菌およびGLBPは腸管での樹状細胞への取り込みを促進するアジュバント効果を持つと考えられ、このWT1発現ビフィズス菌の構造から強い抗腫瘍効果がみられることを明らかにした。また膠芽腫同所移植モデルを用いた実験においてWT1発現ビフィズス菌による抗腫瘍効果は抗CTLA4抗体を併用することで増強した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスにWT1発現ビフィズス菌を内服させ、24時間後に腸管を摘出し、大腸、小腸、腸管膜リンパ節、脾臓組織から薄切標本を作製した。B.LongumのもつDNAに対して特異的なFISHプローブを作成した。このプローブを用いてマウスの腸管組織を染色したところ、小腸腸管腔にB.Longumを検出することができた。しかし、大腸、脾臓、腸間膜リンパ節では検出できなかった。また10日間 PBS、B.Longum、B.Longum+GLBP、 WT1発現ビフィズス菌を内服させたマウスのパイエル板、腸間膜リンパ節、脾臓に含まれる樹状細胞の性質をフローサイトメトリー法を用いて調べた。WT1発現ビフィズス菌においてパイエル板で強く樹状細胞が活性化していた。一方、リンパ球は腸間膜リンパ節中のリンパ球が最もIFNγを産生した。このことからWT1発現ビフィズス菌は小腸で吸収されパイエル板で樹状細胞を活性化、腸間膜リンパ節でWT1特異的キラーT細胞が増殖し、その結果、抗腫瘍効果が発揮されることが明らかになった。またパイエル板における樹状細胞はPBS< B.Longum < GLBP発現B.Longum < WT1発現ビフィズス菌の順に増強がみられた。このとこからもB.LongumやGLBP発現B.Longumがアジュバント効果を持つことを明らかにした。また膠芽腫同所移植モデルを用いた実験においてWT1発現ビフィズス菌による抗腫瘍効果は抗CTLA4抗体を併用することで増強した。このモデルにおける腫瘍免疫環境の解析をおこなうことができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度はWT1ペプチドとWT1発現ビフィズス菌が活性化させる樹状細胞の種類、機能の差を明らかにしたいと考えている。過去にWT1発現ビフィズス菌等を内服させたマウスのパイエル板から採取した検体を保存しており、保存検体を用いて樹状細胞の表面マーカーの発現の差をフローサイトメトリー法により調べる。またヒト末梢血単核球をWT1発現ビフィズス菌によって刺激した時の樹状細胞の特徴を明らかにする。担癌モデルマウスにWT1発現ビフィズス菌を内服時させた後に脾臓細胞を取り出し、RMAS細胞に対するキリングアッセイをおこなった。この結果、WT1発現ビフィズス菌による抗腫瘍効果はCD8陽性細胞のみではなく他の細胞の関与も考えられた。そこでWT1発現ビフィズス菌が活性化する樹状細胞の特性を明らかにすることで、WT1発現ビフィズス菌のもつ強い抗腫瘍効果に関与するNK細胞や自然免疫系の細胞群を明らかにすることができると考える。また膠芽腫同所移植モデルは確立したため、抗CTLA-4抗体を併用した場合の腫瘍内浸潤細胞の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成31年度はWT1ペプチドとWT1発現ビフィズス菌によって活性化する腸管粘膜下、血液中の樹状細胞の種類、機能の差をマウスにおいて明らかにしたいと考えている. すでにマウスの検体は保管しており、フローサイトメトリー法によって検討する。 また膠芽腫同所移植モデルにおける抗CTLA4抗体併用WT1発現ビフィズス菌投与によりどのような腫瘍内免疫環境が変化したか、を解析する。こちらも腫瘍を摘出しフローサイトメトリー法を用いておこなう予定である。いずれもフローサイトメトリー法に用いる抗体はすでに取得しているため、実験用に用いるチューブ類を購入する。
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Research Products
(1 results)