2017 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮細胞由来因子を用いた認知症前駆期における大脳白質高信号の治療法の開発
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17K10291
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
倉知 正 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20271546)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 細胞外小胞 / エクソソーム / オリゴデンドロサイト前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞由来の細胞外小胞(エクソソーム)に含まれるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の生存・増殖を促進する分子を同定、この分子を包含するエクソソームを用いた白質病巣の修復法を開発することを目的として、平成29年度は下記の実績が得られた。 OPCの生存・増殖を有意に促進する活性をもつラット大脳皮質毛細血管内皮細胞(MVEC)由来エクソソームに加えて、ラット線維芽細胞(Rat-1)由来エクソソーム、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)由来エクソソームを調製し、それらに含まれるタンパク質を質量分析(nanoLC-MS/MS分析)により網羅的に半定量的に解析した。 質量分析による解析から、MVEC由来エクソソーム表面にフィブロネクチン(FN)が豊富に存在することを明らかにした。このことはELISAにおいても確認された。FNは細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)と相互作用することから、MVEC由来エクソソーム表面のFNとOPC表面のHSPGとの結合阻害がOPCにおけるエクソソームの取り込みに及ぼす効果を、フローサイトメトリーにより検討した。エクソソーム表面のFNとOPC表面のHSPGとの結合を阻害することでOPCによるMVEC由来エクソソームの取り込みが減少し、OPCの生存・増殖促進効果が減弱することを明らかにした。 エクソソームで発現が高いmicroRNAがOPC生存・増殖の促進に関与していると考えられることから、MVECおよびRat-1由来エクソソームからRNAを調製、microRNA定量PCRパネルにより解析した。また、MVEC由来エクソソームに含まれるmicroRNAのライブラリーを構築してmicroRNA-Seq解析により発現プロファイルを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、MVEC由来エクソソームに含まれるタンパク質およびmicroRNAの網羅的解析を進めた。さらに、OPCの生存・増殖の促進に関与するエクソソーム由来のmicroRNAについて候補分子を絞り込むために、MVEC由来エクソソームを添加したOPCおける発現遺伝子のRNA-Seq解析を行った。これらの解析結果に基づいてデータベースを活用してOPCの生存・増殖に関わる候補因子(タンパク質およびmicroRNA)の探索を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
質量分析による解析結果をもとにMVECおよびRat-1由来エクソソームに含まれるタンパク質群を比較し、MVEC由来エクソソームに多く含まれるタンパク質を絞り込む。これらのタンパク質についてデータベース(KEGGなど)を利用したパスウェイ解析などを行い、OPCの生存・増殖を促進する候補タンパク質を得る。候補タンパク質がエクソソーム表面タンパク質である場合、OPC培養系を用いて候補タンパク質のアンタゴニストによる阻害実験を行い、OPCの生存・増殖に効果をもつタンパク質を同定する。一方、候補タンパク質がエクソソーム内部タンパク質である場合、候補タンパク質遺伝子をOPCに導入して過剰発現させ、OPCの生存・増殖に効果をもつタンパク質を同定する。 また、MVEC由来エクソソームに含まれるmicroRNAのmicroRNA-Seq解析、MVEC由来エクソソームを添加したOPCおけるmRNA発現プロファイルからOPC生存・増殖の促進に関与すると考えられる候補microRNAを得る。これらの候補microRNAについてOPCにおける過剰発現・機能阻害を行い、エクソソーム処理と同様にOPCの生存・増殖促進を誘導するmicroRNAを同定する。 レンチウイルスベクターを利用して高濃度で目的タンパク質を表面あるいは内包するエクソソームをHEK293細胞などに産生する系を構築する。同様に、レンチウイルスベクターにより高濃度で目的microRNAを内包するエクソソームをHEK293細胞などに産生する系を構築する。得られるエクソソームを培養OPCに添加してOPCの生存・増殖を促進するエクソソームをスクリーニングする。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していたよりも少ない回数の初代培養により一定の成果が得られたため、実験動物(ラット)や細胞培養用試薬などに関わる経費が当初の見積額より抑えられ、次年度使用額が生じた。 (使用計画)培養系を用いた候補タンパク質の阻害実験や、候補miRNAの過剰発現・機能阻害実験に関わる試薬などの経費として使用する。
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