2018 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮細胞由来因子を用いた認知症前駆期における大脳白質高信号の治療法の開発
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17K10291
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
倉知 正 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20271546)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 細胞外小胞 / エクソソーム / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞由来の細胞外小胞(エクソソーム, EV)に含まれるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の生存・増殖を促進する分子を同定、この分子を包含するエクソソームを用いた白質病巣の修復法を開発することを目的として、平成30年度は下記の実績が得られた。 ラット脳微小血管内皮細胞由来EV (MVEC-EV) に比べ、ラット線維芽細胞由来EV (Rat-1-EV) はOPCの生存・増殖を促進する活性が低い。これらの2つの異なるEVが含むタンパク質を質量分析により網羅的に解析した。 質量分析によりMVEC-EVに含まれるタンパク質(1388個)、Rat-1-EVに含まれるタンパク質(695個)を同定した。このうちMVEC-EVのみに含まれるタンパク質は869個であり、その中でOPCの生存・増殖促進に関連することが強く示唆される血小板由来成長因子PDGF-Bを候補タンパク質として検討した。ELISA測定によりMVEC-EV1ugあたり約10pgのPDGF-Bが検出されたが、Rat-1-EVについては検出限界以下であった。抗PDGF-B抗体を用いたウェスタンブロッティングにおいてMVEC-EVに明瞭なバンドが認められたが、Rat-1-EVでは検出されなかった。抗PDGF-B抗体を用いた免疫電子顕微鏡によりMVEC-EVの膜表面に金コロイドの付着が観察され、PDGF-Bの存在が確認された。OPCに対するMVEC-EVに含まれるPDGF-Bの効果を検討するため、MVEC-EVを添加したOPC培養系にPDGF-Bに対する中和抗体を加えたところ、抗体存在下でOPCの増殖が有意に抑制された。これらの結果により、MVEC-EVにPDGF-Bが含まれていることが明らかとなった。また、このMVEC-EVに含まれるPDGF-Bにより、OPCの増殖が促進される可能性が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、MVEC由来エクソソームに含まれるタンパク質の網羅的解析を進め、OPCの生存・増殖の促進に関与するエクソソーム由来のタンパク質としていくつかの候補分子を絞り込んだ。このうちの一つ血小板由来成長因子PDGF-Bについて、OPCの増殖促進に関与する可能性が高いことを明らかにした。他の候補因子のOPCに対する効果についても解析を進めている。 MVEC由来エクソソームを添加したOPCおける発現遺伝子のRNA-Seq解析を行い、データベースを活用してOPCの生存・増殖に関わるmicroRNAの探索を進めている。また、MVEC由来エクソソームに含まれるmicroRNAのmicroRNA-Seq解析に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質質量分析の結果から絞り込まれたOPCの生存・増殖の促進に関与すると考えられるエクソソーム由来のいくつかのタンパク質について、阻害薬を用いるなどしてOPCの生存・増殖への効果を確認する。 MVEC由来エクソソームに含まれるmicroRNAについてのmicroRNA-Seq解析からOPC生存・増殖の促進に関与すると考えられる候補microRNAを得る。これらの候補microRNAについてOPCにおける過剰発現・機能阻害を行い、エクソソーム処理と同様にOPCの生存・増殖促進を誘導するmicroRNAを同定する。 レンチウイルスベクターを利用して高濃度で目的タンパク質を表面あるいは内包するエクソソームをHEK293細胞などに産生する系を構築する。得られるエクソソームを培養OPCに添加してOPCの生存・増殖を促進するエクソソームをスクリーニングする。OPCの生存・増殖を促進する効果が確認されたエクソソームを白質虚血ラットモデルに投与し、白質病変における再髄鞘化の誘導を試みる。
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Causes of Carryover |
(理由)実験動物(ラット)や細胞培養用試薬などに関わる経費が当初の見積額より抑えられた。また、MVEC由来エクソソームに含まれるmicroRNAについてのmicroRNA-Seq解析の開始が予定より遅くなり、これに関わる経費の一部を次年度に使用することとした。 (使用計画)microRNA-Seq解析に関わる試薬、培養系を用いた候補タンパク質の阻害実験や候補miRNAの過剰発現・機能阻害実験に関わる試薬などの経費として使用する。
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