2019 Fiscal Year Research-status Report
Quantification and biological backgrounds of depressive mixed state
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17K10311
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
近藤 毅 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40215455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三原 一雄 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30302029) [Withdrawn]
甲田 宗良 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50736189) [Withdrawn]
新里 輔鷹 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20838057)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | うつ病エピソード / 抑うつ性混合状態 / DMX-12 / 内発的な不安定さ / 脆弱な応答性 / 破壊的感情/行動 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究者らが開発した抑うつ性混合状態(depressive mixed state: DMX)の定量的な自記式評価票(DMX-12)を公表し、その症候学的構造を明らかにするとともに、本評価票を指標として一般的なうつ病エピソードにみられるDMXの実態を明らかにした(Shinzato et al, Neuropsychiatr Dis Treat, 2019)。DMX-12は「内発的な不安定さ」「脆弱な応答性」「破壊的感情/行動」の3つの症候クラスターにより構成され、うつ病の重症度が高く潜在的に双極性を有する若年患者がDMXを呈しやすいことが示唆された。破壊的感情/行動クラスターはカテゴリカル診断である混合性うつ病(mixed depression:MD)や混合性の特徴(mixed features specifier:MF)の識別に有用であった。 特に、receiver operating characteristic(ROC)解析により、DMX-12の中の過剰反応、内的緊張、思考促迫・混雑、衝動性、易刺激性、攻撃性、危険行為、不快気分の8症状の総スコアが同一のカットオフ値をもってMD、MFを高い感度と特異性で識別できることから、一定の重症度を持つDMXのスクリーニングに有用となる可能性が示唆されており、現在、これらの成果を投稿中である。 また、DMX-12を用いてDMXと自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)および自殺行動リスクとの関連についても検討し、MDはASDや自殺関連行動との関連が深く、ASDのうつ病エピソードにおいては「転導性」「気分易変」「衝動性」などの内発的な不安定さを特徴とすることが判明した(新里他,日本精神神経学会,2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抑うつ性混合状態(DMX)に対する定量的な自記式尺度であるDMX-12を開発し、その症状学的構造やDMXの重症度を可視化し、それらのディメンジョナルな評価を基に、DMXの危険因子との関連を明らかにすることを可能とした。また、DMXのカテゴリカル診断との整合性を一致させる形で、異なる診断分類(混合性うつ病と混合性の特徴を有するうつ病)間でカットオフ値を共有できる8症状を選択し、臨床上は見逃されがちであったDMXに対して、時間的負担が少なく、簡便性に優れたスクリーニング法を提供できた点で、臨床に大きく還元できる成果を残した。 さらに、DMXの病態との密接な関与が示唆されている自閉スペクトラムや自殺行動リスクとの関連についても、DMX-12を用いて数値化された量的評価を基に相関を検討することが可能となっており、今後、DMXの危険因子の客観的な抽出・解明を試みていくうえで、DMX-12が有用な評価ツールとして機能することも大いに期待される。 以上の点より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、自閉スペクトラム特性、自殺関連リスクおよびうつ病エピソード後の転帰との関連を中心として、DMXと密接に関連する病態やDMXの危険因子との関連をDMX-12を用いた量的評価を基に包括的に検討していく予定である。 一方、DMX-12をDMXの定量的評価ツールとして用い、治療的介入前後のDMX の重症度推移の可視化と神経免疫(炎症性サイトカインや神経栄養因子)/神経生理学的なマーカー(光トポグラフィーによる言語流暢性課題時の前頭葉活動)の変動との関連についても検討し、DMXの重症度や治療反応性に関連する生物学的指標を見出していく予定である。そのために、治療的介入が行われる症例の経時的変化を追跡するためのサンプリングを特に優先して集積し、前述した研究課題の解明に向けたデータの解析に努めたい。
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Causes of Carryover |
生物学的マーカーの測定に際し、同一症例で経時的に取られた多くのサンプルは、同一日に測定した方が個体間変動をみるうえで結果の誤差が少ないため、サンプリングが終了する次年度においてまとめて測定を行う計画を立てた。このため、次年度使用額が発生した。
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Research Products
(10 results)