2017 Fiscal Year Research-status Report
難治性固形癌の局所免疫環境に着目した手術期の個別化免疫化学療法の開発
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17K10532
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 講師 (50507572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
七戸 俊明 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70374353)
中村 透 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70645796)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 癌局所環境 / 実験外科 / TIL / 異所性リンパ組織 / 免疫チェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である平成29年度は、北海道大学病院消化器外科IIで切除した膵癌・胆道癌手術切除切片を用いて腫瘍局所免疫環境の免疫組織学的解析を行った。 肝外胆管癌におけるPD-L1発現と腫瘍微小環境への影響、予後との関連、またPD-L1発現とEMT(Epithelial mesenchymal transition)の関係についての解析を行った。1995年1月から2006年11月までに当科で根治切除を施行した肝外胆管癌117症例を対象とし、Tissue microarrayを用いて網羅的に免疫組織染色を行い統計学的に比較検討した。標的抗原はCD4、CD8、Foxp3、PD-L1、E-cadherin、N-cadherin、Vimentin、ZEB1、ZEB2、SNAIL、TWISTとし、PD-L1発現の評価はH-scoreを用いて行い,cut-off値の設定は生存期間中央値における生死でROC曲線を用いて設定した.全117症例の年齢中央値71歳(44-87歳)。観察期間中央値は27か月(0-189か月)で98症例(84%)が観察中に死亡した。PD-L1高発現は、E-cadherin低発現(P=0.001)、Vimentin高発現(P<0.001)とZEB1高発現(P=0.036)と相関がみられた。多変量解析ではCD4陽性細胞浸潤の少数(HR=0.61; 95% CI=0.38-1.00,P=0.049)とPD-L1高発現(HR=4.27; 95% CI=1.82-9.39,P=0.001)が独立した予後不良因子であった。これらの結果より肝外胆管癌におけるPD-L1発現は予後予測的なバイオマーカーであり,免疫チェックポイント阻害剤による治療の患者選択において有用な指標となる可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PD-L1発現はSP142とE1L3Nの2種類のclone抗体を用いて免疫染色を行った。発現の評価に関しては、陽性となっている腫瘍細胞の割合(1%、5%、10%および50%)と強度(0,none;1,weak;2,moderate;3,intense)を掛け合わせたH-scoreに関してカットオフ値を設定した。SP142とE1L3N cloneのH-scoreの相関はSpearmanの順位相関係数により解析し、H-scoreのカットオフ値を決定するためにROC曲線を用いた。また染色された腫瘍細胞の割合と生存の有無(生存期間中央値での生死)についてROC解析を行った。有意差はP<0.05とした。統計はJMP12.0 (SAS Institute, Inc., Cary, NC, USA)を用いて行った。SP142 cloneのPD-L1発現は42症例(36%)で認めたが、108症例(92%)においてその発現の割合は10%以下であった。SP142 cloneのPD-L1のH-scoreは0-140(中央値0、四分位区間0-1.5)であった。E1L3N cloneのPD-L1発現は53症例(45%)で認めた。E1L3N cloneのPD-L1のH-scoreは0-195(中央値0、四分位区間0-5)であった。E1L3N clone発現はほとんどSP142 clone発現と一致していた(Spearman ρ=0.6725,P<0.0001)。予後不良の臨床病理学的因子を含めた多変量解析の結果は、SP142 cloneのH-scoreを用いた分類の方が最も予後を反映しており、PD-L1高発現が独立した予後不良因子(HR=0.48;95% CI=0.29-0.84;P=0.0107,HR=5.08;95% CI=2.01-12.0;P=0.0010)であった。肝外胆管癌におけるPD-L1発現は、SP142 cloneのH-scoreを用いた分類が他の分類よりも予後を反映していることを示した。また肝外胆管癌のPD-L1発現の評価において、割合だけではなく強度も含めた検討が有用である可能性が示された。これらの結果は、SP142 clone によるPD-L1発現評価が、予後予測因子だけではなく治療効果予測因子となる可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き膵癌局所環境の解析において、化学療法の効果を反映する新規バイオマーカーの同定を病理組織学的に行う。バイオマーカーとして腫瘍浸潤リンパ球(TIL)関連マーカー:CD3、CD4、CD8、CD20、Foxp3、腫瘍血管関連マーカー:CD31、CD34、PNAd、ICAM、VCAM、MADCAM、ケモカイン関連マーカー:CCL19、CCL21、CXCL13)に関して、解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)