2018 Fiscal Year Research-status Report
難治性固形癌の局所免疫環境に着目した手術期の個別化免疫化学療法の開発
Project/Area Number |
17K10532
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 講師 (50507572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
七戸 俊明 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70374353)
中村 透 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70645796)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腫瘍局所免疫環境 / 免疫応答 / 難治性固形癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度前半は、昨年胆道癌の局所免疫環境について解析したデータ, すなわち胆道癌局所免疫環境におけるCD4,CD8,Tregリンパ球浸潤と上皮間葉転換の関係、免疫チェックポイント阻害分子の関係を論文としてまとめ、胆道癌においては腫瘍局所へのCD4リンパ球浸潤レベルが低いこと、腫瘍細胞のPD-L1発現が高いことが独立した有意な予後不良因子であることを見出し、” Prognostic impact of programmed cell death ligand 1 (PD-L1) expression and its association with epithelial-mesenchymal transition in extrahepaticcholangiocarcinoma.”としてOncotargetにアクセプトされた。平成30年度後半は、膵癌手術切除切片を用いて腫瘍局所免疫環境の免疫組織学的解析を行った。膵癌局所環境に存在する異所性リンパ組織(Tertiary lymphoid organs, TLO)と免疫細胞の遊走・局所浸潤に関与するTLO内の高内皮細静脈 ( High endothelial venule, HEV)に着目し、膵癌術前化学療法が腫瘍局所環境に及ぼす影響と治療成績との関連を解析した。背景としては、膵癌は極めて悪性度の高い腫瘍であり、術前化学療法( NAC)を含めた集学的治療の有効性が報告されているが、腫瘍局所微小環境内に出現するTLOと予後の相関が、近年、様々な癌腫で報告され、局所免疫環境制御における浸潤リンパ球のgate keeperとしてのTLOの役割が次第に明らかになってきていることにある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2009年1月~2015年12月に当科で根治切除術を施行した膵癌症例140例を対象とした。NAC群47例、SF(手術単独)群93例の2群に分類し、免疫組織染色( IHC)を施行して、両群間におけるTLO内構成細胞を統計学的に後方視的に比較検討した。 IHCマーカーとしてはCD4、CD8、CD20、Foxp3、PD-1、CD80、CD163陽性細胞の浸潤とKi67 indexを、またHEVマーカーとしてPNAdの発現レベルを検証することとした。 TLOはNAC群47例中40例( 85.1%)、SF群93例中88例( 94.6%)に認めた。NAC群ではTLO内CD8陽性Tリンパ球( p=0.0046)、HEV( p=0.0149)、CD163陽性マクロファージ( p<0.0001)、Ki-67陽性細胞( p=0.0003)の割合が有意に高く、一方PD-1陽性細胞はNAC群で有意に低値であった( p=0.0004)。現在、TLO内免疫細胞の発現レベルと予後の相関を解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌術前治療は、腫瘍局所微小環境で高内皮細静脈の形成を促進し、抗原貪食と抗原提示に関わるマクロファージの遊走、細胞傷害性Tリンパ球の浸潤、免疫チェックポイント分子の発現低下を誘導することにより抗腫瘍免疫能を増強する可能性がある。引き続き膵癌局所環境の解析において、化学療法の効果を反映する新規バイオマーカーの同定を病理組織学的に行い予後との相関や臨床的意義について検討を進めていく予定である。
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