2017 Fiscal Year Research-status Report
Novel cancer therapy to target ROS from unhealthy mitochondria
Project/Area Number |
17K10542
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
二村 学 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10415515)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | Mieap / ミトコンドリア / ROS / 乳癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ミトコンドリアの主な生理的役割は細胞生存に重要なエネルギー源であるATP産生であり、その過程で種々の活性酸素種(ROS)を発生する。ミトコンドリアは抗酸化作用も併せ持っており細胞内ROSレベルは適正に保たれている。一方、増殖の盛んな癌細胞のミトコンドリアはいわゆる不良なミトコンドリアでありATP産生は効率の劣る解糖系に依存しており(Warburg効果)、正常細胞よりROSレベルも高い。p53下流遺伝子であるMieap(ミトコンドリアを食べる蛋白質)は、ROSをセンサーとして不良なミトコンドリアを感知し、修復・除去することでミトコンドリアの機能を改善・維持している。この遺伝子は多くの癌細胞株でプロモーターのメチル化による発現消失が見られるが、多数のp53下流遺伝子の中でこれほど顕著な発現異常をきたす遺伝子の例は他にない(2)。我々は、「Mieapは発癌や癌の増殖・進展に対して抑制的に働くが、プロモーターのメチル化やp53不活化によるMieapの発現消失は癌の生存に有利に働く」と考えている。日本を始め全世界で罹患率が最も高い女性の癌である乳癌は、近年の患者増加は著しく早期診断法や新規治療法の開発が望まれる。我々の検討では、乳癌におけるMieapの関与を検討することとした。そのデータに基づき、(1)ミトコンドリア形態・機能を利用した癌の悪性度診断法の開発。(2)Mieap、あるいは抗ROS療法によるアポトーシスを増強させる治療の開発、へとつなげていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当院で生検・手術時に採取保存した乳癌(浸潤癌、非浸潤癌)と乳腺良性腫瘍検体を用いて,(a) p53-Mieap-BNIP3経路のgenetic, epigeneticな遺伝子変異頻度を検索する。(b)免疫染色によるMieapの発現、電子顕微鏡によるミトコンドリアの形態から腫瘍ミトコンドリアの機能的・形態的評価を行う。この評価が腫瘍の悪性度判定を反映するバイオマーカーとなりうるかについて検討する。(c)試験管レベルでMieap誘導細胞死のメカニズムを明らかにする。乳癌細胞株を用いてMALMやMIVを介した表現型の検討を行う。 について、乳癌特徴的な所見が得られ現在論文投稿の準備を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒト癌において不良ミトコンドリアとROSを標的とした新たな治療法の検討を行う。癌細胞の持つ不良なミトコンドリアとそこから発生するROSを標的とする治療法と考える。(a)ROS除去因子(Mn-SOD)を直接ミトコンドリア内で発現させる実験系を樹立し、ミトコンドリア由来のROSを標的として、腫瘍の形質転換あるいは細胞死誘導を試みる。細胞内ROS消去による癌細胞の挙動を細胞レベルで解析を行っている。また抗酸化剤と化学療法や放射線療法の併用を行い、抗酸化作用による治療増強作用とそのメカニズムについて検討する。
|