2018 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアを介した活性酸素制御による乳癌のホルモン療法耐性機構の解明
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17K10551
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉丸 哲郎 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 講師 (80424729)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HER2陽性乳癌 / ミトコンドリア / 治療耐性 / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、乳癌発現亢進分子BIG3がA-キナーゼPKAおよびプロテイン・ホスファターゼPP1Cαと複合体を形成するA-キナーゼアンカータンパク質として機能し、PHB2の脱リン酸化を介してその抑制活性を喪失させる新しい機能喪失機構を見出した。さらに、BIG3-PHB2相互作用を標的とした分子内架橋型阻害ペプチド(stapled-ERAP, stERAP)を開発し、stERAP投与によってBIG3から解放されたPHB2の腫瘍抑制機能の再活性化を利用した新たな治療法を提唱している。 本研究は、BIG3-PHB2複合体がミトコンドリアにも局在することに着目し、stERAPのミトコンドリア由来活性酸素種(ROS)制御を評価することで、乳癌細胞におけるROS動態関連シグナルの網羅的解析を通じて、乳癌におけるホルモン療法耐性機構を解明を目指す。これまでに、HER2陽性乳癌細胞株でBIG3-PHB2複合体がミトコンドリアROS産生を制御していることを示し、耐性細胞株のROS産生量が有意に高いことを観察した。 本年度は、その分子機構の解明を目的に、BIG3-PHB2相互作用の阻害によりPHB2を再活性化したときのタンパク質および遺伝子発現の変動をプロテオーム解析およびトランスクリプトーム解析により調査した。その結果、stERAP処理により遊離したPHB2は細胞ストレスに応じて、核、ミトコンドリア、小胞体にそれぞれ局在し、多くの分子と結合することが明らかになり、多岐の癌関連シグナルを制御すること、数多くの癌関連遺伝子群の発現を抑制することを確認した。これらの事実は、PHB2が各オルガネラで抑制活性を有することができ、BIG3がミトコンドリアを含む各オルガネラでのPHB2の抑制機能を喪失させる必須な分子と考えられ、包括的な発がん進展機構の解明につながることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳癌細胞の各オルガネラにおけるBIG3-PKA-PP1Cα複合体によるPHB2の抑制機能制御を通じた乳癌細胞増殖の分子機構を明らかにするため、BIG3-PHB2の結合阻害ペプチドによりPHB2の抑制機能を再活性化したときの遺伝子発現およびタンパク質の変動を明らかにし、BIG3から遊離したPHB2が細胞ストレスに応じて、核、ミトコンドリア、小胞体で、多くの分子と結合することで、多岐にわたるシグナル経路を制御できる可能性を明らかにしている。すなわち、BIG3-PHB2複合体が乳癌の耐性獲得の原因のひとつであり、薬剤耐性乳癌の治療に重要なターゲットであることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
BIG3-PHB2の結合阻害ペプチドが、PHB2によりミトコンドリア内ROS産生を抑制すること、多岐の癌関連シグナルを制御すること、数多くの癌関連遺伝子群の発現を抑制することを確認した。今後、ミトコンドリア電子伝達系の選択的阻害剤やROSスカベンジャーを用いて、細胞増殖とリン酸化カスケードに対する抑制効果を検討し、ミトコンドリア内BIG3-PHB2複合体がミトコンドリア内ROSを介して乳癌細胞の増殖を制御していることを明らかにする。 また、耐性乳癌細胞株を移植した同所性マウスを作製し、阻害ペプチドならびにROS阻害剤との併用を腹腔内投与して抗腫瘍効果を検討する。 さらに、薬剤耐性乳癌の臨床検体を用いたBIG3やPHB2リン酸化の免疫組織染色を行い、各臨床情報(ホルモン療法、抗癌剤との併用療法、予後など)との相関関係を検証する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた動物実験を遂行することができなかったため、次年度に繰り越しており、繰り越した助成金は動物実験に使用する。
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Research Products
(6 results)