2018 Fiscal Year Research-status Report
胃癌における免疫チェックポイント分子発現に着目した新規バイオマーカーの開発
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17K10593
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Research Institution | Kyushu Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers |
Principal Investigator |
伊藤 修平 公立学校共済組合九州中央病院(臨床研究センター), 臨床研究センター, 研究員 (10706914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室 圭 愛知県がんセンター(研究所), がん予防研究分野, 研究員 (10501687)
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
深川 剛生 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (60313152)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PD-1 / PD-L1 / CD8 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】胃癌における免疫チェックポイント阻害薬の実臨床での使用が始まっている。免疫関連有害事象、高額な薬価という問題に対し、適正使用のための正確な治療効果予測、予後予測マーカーの同定が喫緊の課題である。【目的】胃癌組織における免疫関連遺伝子mRNA発現の臨床的意義を検討する。【対象】胃癌切除例163例。【方法】胃癌切除症例163例の正常組織、腫瘍組織のPD-1, PD-L1, CD8遺伝子mRNA発現を定量RT-PCR法 (GAPDHにて補正)、うち25例のPD-1, PD-L1蛋白発現を免疫組織化学染色にて検討した。【結果】(1) 正常組織、腫瘍組織のmRNA発現:腫瘍組織のPD-1, PD-L1, CD8 mRNA発現は、正常組織と比較し0.35, 0.76, 0.4倍と低下していた (それぞれP<0.0001, P<0.05, P<0.0001)。(2) 腫瘍組織のmRNA発現と予後の相関:PD-1, PD-L1, CD8 mRNA低発現群は、それぞれ高発現群と比較し予後不良であった (いずれもP<0.05)。分化型腺癌ではPD-L1 高/低発現群で予後に有意差を認めなかったのに対し、未分化型腺癌ではPD-L1低発現群で有意に予後不良であった (P<0.001)。全生存率に関する多変量解析では、リンパ節転移、腹膜播種、遠隔転移、PD-L1 mRNA低発現が独立予後不良因子であった (PD-L1低発現:HR 2.29, 95%CI 1.20-4.29, P<0.05)。(3) 腫瘍組織の蛋白発現:PD-1蛋白は腫瘍組織の56% (14/25)に発現を認め、局在はリンパ濾胞であった。PD-L1蛋白は腫瘍組織の64% (16/25)で高発現しており、局在は主として免疫担当細胞であり、腫瘍細胞の発現は軽度であった。(4) mRNA発現と蛋白発現の相 関: PD-1, PD-L1ともにmRNA発現と蛋白発現に有意な相関を認めた (PD-1, P<0.01; PD-L1, P<0.05)。【結語】胃腫瘍組織のPD-1, PD-L1, CD8 mRNA低発現は、局所の免疫抑制状態を反映しており、胃腫瘍組織内の免疫担当細胞が発現しているPD-L1 mRNA発現は、予後予測マーカーになることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の末梢血における免疫関連遺伝子のmRNA発現データに加え、本年度は、腫瘍組織、正常組織に関しても同様に免疫関連遺伝子のmRNA発現のデータを得て、解析しており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
各症例について、これまでに集積したmRNAのデータと臨床病理学的因子、予後のデータを総合的に解析することにより、癌局所、および全身の抗腫瘍免疫反応について考察する。さらに、簡便で低侵襲な血液検査をもとに、免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫治療の奏効が期待できる症例の選別に関して考察する。
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Causes of Carryover |
物品費が予想よりかからなかったため。翌年度分の物品費として使用する予定である。
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