2017 Fiscal Year Research-status Report
脊柱靭帯骨化を起す間葉系幹細胞の異常の機序解明とそれに基づく治療薬の標的探索
Project/Area Number |
17K10916
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
古川 賢一 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (20165468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 簡一郎 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (20431447)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊柱靭帯 / 異所性骨化 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / コンドロモジュリン / 間葉系幹細胞 / 内軟骨性骨化 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊柱靭帯の異所性骨化の本体が間葉系幹細胞(MSC)であることを我々は既に明らかにしている。本研究では、なぜ骨化患者の靭帯組織のMSCが、正常組織のMSCに比べて、骨化しやすいのかを明らかにすることが第一の目標である。そのためには、研究資源である多数の間葉系幹細胞のセルラインの確立が欠かせない。十分なインフォームドコンセントを得た上で、手術時に摘出廃棄する靭帯組織を得て、そこから間葉系幹細胞を単離培養した(分担研究者 和田)。これまで約300ほどの骨化組織由来MSCを確立した。ただ、そのコントロールとなる非骨化患者由来のMSCのセルライン数が、手術適用例が少ないために十分とはいえない。そこで更に充実させるべく、関連病院との連携のもと、収集を図っている。 次に、骨化の機序として、我々はゲノムDNAのメチル化というエピジェネティックな機序に注目し、骨化関連の遺伝子のメチル化を両組織間で比較した。注目すべきは、コンドロモジュリン1という蛋白で、その遺伝子の発現調節部位が骨化組織由来MSCでは、正常MSCに比して強くメチル化を受けていて、その蛋白発現および機能が著しく抑制を受けていた。コンドロモジュリンは、軟骨組織で多く発現しており、骨組織への移行を阻止する役割を持つ。靭帯の骨化は内軟骨性骨化の過程をたどり、軟骨細胞の出現とその後の骨転換が起こるが、コンドロモジュリンは強くメチル化を受けて機能を抑制されると、その移行を阻止できず、骨化が進展するという我々の仮説を支持する結果が得られた。今後、コンドロモジュリンのメチル化以降、骨化につながる機序を解明してゆく予定である。 一方、治療薬の基となる薬物の探索も並行して行っている。 ヒスタミンH2受容体阻害薬のファモチジンが易骨化モデルマウスTWYマウスに投与すると、靭帯の骨化を著明に抑制することが明らかになった。現在その機序の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた、マウスに患者由来のMSCを移植して、実際に骨化が誘発されやすいかどうかを調べる実験が、実験動物入手などの点で未着手になっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
患者にとって、骨化の予防、進行抑制出来る安全な薬物治療の開発が喫緊の課題である。 そこで、病因の解明とともに、骨化を抑制する薬物の探索を重点的に行いたい。 現在、既存薬であるが、候補がいくつか見つかっている。それをまず手がかりに構造活性相関等の手法を用いて新たな薬物の創出を行いたい。
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Causes of Carryover |
当初計画していたDNAメチル化の網羅的解析の準備が年度内に進まず、その受託解析依頼分の経費が繰り越したため、次年度使用額が生じた。 次年度に実施を予定している。
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