2018 Fiscal Year Research-status Report
脊柱靭帯骨化を起す間葉系幹細胞の異常の機序解明とそれに基づく治療薬の標的探索
Project/Area Number |
17K10916
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
古川 賢一 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (20165468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 簡一郎 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (20431447)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊柱靭帯 / 異所性骨化 / 間葉系幹細胞 / 細胞遊走 / SDF-1 / CXCR4 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の柱は、脊柱靭帯の異所性骨化の機序を明らかにし、薬物治療の標的を見出すことである。我々は、これまでに脊柱靭帯の異所性骨化をもたらす本体が靭帯組織の間葉系幹細胞(MSC)であることを明らかにしてきた。本研究では、更に骨化患者の靭帯組織のMSCがどのように骨化に関与するかを明らかにする為、正常時と骨化病変時におけるMSCの局在を免疫組織化学並びに細胞化学的に解析した。その結果、1)正常時には靭帯組織にわずかに存在する血管の周囲にMSCは局在すること、一方で、2)骨化進展時にはそのMSCが病変部に移動して来ることを明らかにした。さらに、3)MSCの調節因子SDF-1とその受容体CXCR4がMSCに発現しており、4)患者由来のMSCではSDF-1/CXCR4が骨化病変部に強く発現していることを明らかにした。また患者由来のMSCを用いたインビトロ実験では、MSCの運動性並びにSDF-1に対する走化性は、CXCR4阻害薬によって抑制されることを見出した。これらの結果から、骨化の機序は次のように考えられた。すなわち、本来靭帯を修復する役割を持つMSCが損傷した靭帯の該当部位に移動し、靭帯組織の修復を図る。しかし、骨化患者のMSCは骨分化能が高く、SDF-1/CXCR4系の誘導によって骨化病変部に遊走したMSCsは、靭帯修復ではなく骨化を促進する可能性が考えられた。 次に、内軟骨性骨化を抑制するコンドロモジュリン-1遺伝子の発現調節を解析した所、その発現調節部位が骨化患者由来MSCでは、非骨化患者由来MSCに比して強くメチル化を受けていて、その蛋白発現および機能発現が著しく抑制を受けていることを見出した。これはコンドロモジュリンが強くメチル化を受けて機能を抑制されると、骨化抑制を阻止できず、骨化が進展するという我々の仮説を支持する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊柱靭帯の異所性骨化の発症機序を解明し、薬物治療の標的を見出すことが本研究の主題であり、その解明により、標的となりうるものを見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
発症において重要な役割を果たすSDF-1/CXCR4経路の関与を見出したので、今後はその特異的阻害物質のスクリーニングを行い、治療薬のシーズ探索を行う予定である。 また、DNAメチル化に依って発現調節を受け、骨化に関与する遺伝子を探索するべく、当大学研究科に導入された、次世代シークエンサーを用いたDNAメチル化の網羅的解析を始めている。それによって、骨化促進刺激によって変動するDNAメチル化の全貌を明らかにし、骨化の機序解明につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初計画していたヒト脊椎靭帯由来間葉系幹細胞のDNAメチル化網羅的解析の準備が若干遅れ、実際の開始が次年度にずれ込んだため。次年度の実験消耗品へ充当する予定である。
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