2017 Fiscal Year Research-status Report
滑膜の慢性炎症およびインスリン抵抗性に着目した変形性関節症の発症・進行制御
Project/Area Number |
17K11011
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
浜田 大輔 徳島大学, 病院, 講師 (90380097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後東 知宏 徳島大学, 病院, 講師 (10420548)
高砂 智哉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 特任助教 (40624755)
和田 佳三 徳島大学, 病院, 助教 (00771289)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 肥満 / 糖尿病 / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工膝関節置換術時に患者の同意を得て滑膜組織を採取している。平成29年度末で7例より滑膜線維芽細胞の分離を行い、凍結保存を行った。内訳は健常者5例、治療中糖尿病患者2例で今後もサンプル採取は継続する予定である。未治療糖尿病患者のサンプル採取も行いたいと考えていたが、コントロール不良例の手術は感染や他の合併症のリスクが高く、糖尿病の治療後に手術が行われる傾向があり現時点で採取は行えていない。 予備実験としてTNFαの培地中の濃度、細胞を刺激する時間、インスリン投与後各種軟骨基質分解酵素の遺伝子発現が影響を受けるまでの時間を検討し、至適濃度、時間を決定し実験計画を作成した。 採取した滑膜より分離した滑膜線維芽細胞を炎症性サイトカインおよびインスリンで刺激し、培地および滑膜細胞からRNAを採取した。RT-PCRでインスリンで刺激した滑膜細胞での軟骨基質分解酵素であるMMP1, MMP13, ADAMTS4の遺伝子発現が低下していることを確認した。またTNFαの刺激で発現が亢進したBMP2, IL6はインスリン投与によりその発現が抑制されることを確認した。TNFα, IL1βはTNFα刺激で発現が亢進する一方でインスリンでの抑制を受けないこと、同じ軟骨基質分解酵素であるADAMTS5がTNFα, インスリンの影響をほとんど受けないことも新たに確認した。このことからインスリンは軟骨基質分解酵素の発現を選択的に抑制しており、必要以上の効果や予期せぬ副作用の可能性の少ない治療のターゲットとなり得ると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採取したサンプル数は予定よりもやや少なく、原因として培養中のコンタミネーションによる破棄、感染症症例を除外したことが考えられる。手術自体は例年通りのペースで施行されているため本年度も同程度のサンプル採取が可能であり引き続き採取を行っていく。 TNFα, インスリンが培養滑膜細胞の遺伝子発現に及ぼす影響は、PCRで評価しており、概ね予定通りかつ予測通り行えている。今年度も引き続きサンプル数を増やして検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きサンプル採取を行う予定である。特に治療中糖尿病患者の数が少なく、今年度に優先的に採取を行う。TNFα, インスリン刺激によりMMP1, MMP13, ADAMTS4といった基質分解酵素がRNAレベルで制御を受けていることまでは確認できており、今後はタンパクレベルでの評価を予定している。具体的にはTNFαで刺激後、インスリンを付加した群と、付加しなかった群の細胞および培地中の基質分解酵素の濃度をウエスタンブロッティング、ELISAで評価する予定である。インスリン抵抗性の証明を培養細胞で行ったものの有意な差は見られず、原因として複数回の継代や、培地中のグルコース濃度が生体内より低いことなどが考えられる。今年度は培養細胞ではなく、手術より採取された組織を利用しインスリン抵抗性の検討を行う予定である。 当初平成30年度内に動物実験も開始する予定であったが In vitroでの検討が予定よりやや遅れており、今年度も引き続き、OA患者より採取した滑膜組織、または組織より単離した滑膜細胞を用いた研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は採取できたサンプルが計画よりも少数であったため、備品、試薬、旅費等は予定よりも少額となった。本年度は昨年より多くの物品費、旅費、発表にかかる費用が必要となる見込みであり、また実験動物の飼育やそれにかかる実験費用が必要となり、それらの費用に充てる予定である。
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