2017 Fiscal Year Research-status Report
両側後根付き脊髄スライスを用いた高速画像解析法による神経障害性疼痛発生機序の解明
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17K11104
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
馬場 洋 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00262436)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊髄スライス / 後根 / 神経障害性疼痛 / イメージング / 膜電位 / 細胞内カルシウム / 成熟動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の当初の目的は、実験に適する動物の週齢を確定すること、両側後根付きスライスの作成が技術的に安定してできることを確認すること、染色前の至適灌流温度・灌流時間を確定すること、染色液の至適濃度・染色時間を確定すること等、実験に必要な方法論を確立することであった。しかしながら、以下の「現在までの進捗状況」に記載したように、年度の初めに実験室を移動させなければならないことが決まり、光学器械や灌流システムの移動の準備や移動先の実験室での実験システムのセットアップに半年以上費やした。移動先で実験システムの再構築が完了した後、移動前と同様に実験システムが稼働するかどうか確認するために片側後根付き脊髄スライスを用いて以前と同様の実験をしてみたところ、全く記録がとれず、原因を究明することとなった。様々な可能性を検討した結果、移動に伴って光学的記録システムが故障していること、及び光学的試薬が変性していることが判明した。その後、光学器械を修理し、米国より新しい試薬を取り寄せ、再び同様の実験を行ったところ、何とか以前とほぼ同様の記録ができるようになった。この時点で既に年度の2/3以上が経過していたが、予定通り、まず実験に適する動物の週齢を検討した。将来的には神経障害性モデル動物を作ることから最低でも7週齢以上のラット(成熟ラット)で行うことが必要であることから、7~15週齢のラットで記録が安定してとれるか比較してみたところ、7~10週齢程度が最も良く記録がとれることがわかった。平成29年度の成果は実験に適する週齢を確定することにとどまったが、今後は染色前の至適灌流温度、至適灌流時間、染色液の濃度と染色時間を決定していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度は医学部の事情で実験室を急に移動しなければならないことになり、移動に関して時間を要したため実験のスタートが大幅に遅れた。移動の準備に約2か月、移動後の実験システムのセットアップに数か月を要した。特に、移動先の実験室は室内の温度・湿度管理や水道あるいは排水状況において、精密な実験ができるような環境ではなく、実験室の大幅な改修が必要となった。また、移動に伴い光学系精密機器が故障し、故障箇所の究明と修理にさらに数か月を要した。さらに、移動に伴って、光学的試薬(-20℃以下での保存が必要)の変性が判明し、米国からの取り寄せに時間を要した。以上のように、様々なアクシデントが重なったため、平成29年度は実験室の整備や実験機器の移動と修理にほとんどの時間が費やされた。現在ではほぼ実験室移動前の状態に復旧したと思われるが、安定して実験システムが稼働するかどうかはさらなる検証が必要と思われる。 上記の理由により、実質的に実験を始められるようになったのは平成29年度の終盤であり、研究の進捗状況としてはかなり遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成29年度に整備・修理した実験システムがこれまでと同等あるいはそれ以上に安定して稼働することをこれまで同じ脊髄横断スライスで確認する必要がある。これにはおそらく10回程度の実験で安定して記録できることを確認すれば良いと思われる。 両側の後根を付した脊髄スライスを作るには、横断スライスと水平断スライスの2通りの方法があり、現時点ではどちらのスライスの方が両側の脊髄後角細胞の興奮を同時に観察するのに適しているかわからない。そのため、両方のスライスを同じ条件で比較してみる予定である。また、現時点では実験室移動前の状況はほぼ復旧したと思われるが、染色前の灌流時間・温度や染色時間、染色液の濃度なども最適なものかどうか確定できていない。これらを確定してから、当初の予定であった神経障害性動物モデルの作成に進みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
光学機器の不具合の原因究明とその修理および実験室の移動に伴うマニピュレーター等の破損の修理に時間を要したため、計画していたほどの実験日が確保できなかったことが最大の理由である。また、幸いにも、スライサーの老朽化が予想ほど進んでいなかったため、現有のスライサーで実験を行うことができたことが、次年度使用額が生じた理由である。このまま、現有のスライサーで実験を継続することができれば、次年度は比較的高額であるカルシウム指示薬の購入に主に使用する予定である。
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