2017 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤ドキソルビシンによる勃起障害の発症メカニズムとその治療法の探索
Project/Area Number |
17K11205
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
木村 和哲 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00423848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 智哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20737928)
堀田 祐志 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (90637563)
前田 康博 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (60275146)
川出 義浩 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (20738439)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / 性機能障害 / テストステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
現在のがん治療では、がん罹患後のサバイバーシップを視野に入れたケアプランが必要である。しかし、抗がん剤による男性性機能への影響に関する論文は皆無であり、ガイドラインが存在しない。申請者らはこれまでに、複数の抗がん剤が男性性機能障害を発症させることを発見した。そこで本研究では、小児がんなどに汎用される抗がん剤のドキソルビシン(DOX)が男性性機能へ及ぼす影響、およびその発症メカニズムを申請者らがこれまで研究を進めてきた男性ホルモンに着目して解明することを目的とする。 本研究では性成熟が完了した12週齢の雄性Wistar/STラットを用い、DOX投与群と生理食塩液(vehicle)のみ投与するControl群の2群を作成し、抗がん剤の勃起機能へ及ぼす影響を評価する。①DOX投与によるラットの勃起機能の継時的変化、②DOXに起因する勃起機能低下の回復時期の検討、③DOX誘発性勃起障害に対する男性ホルモン投与の効果の3点を検討する。勃起機能評価の指標として海綿体内圧(ICP)測定を行い、さらにNOSやADMAなどの血管平滑筋弛緩反応に関わるNO関連因子を分子生物学的手法および生化学的手法を用いた検討を行う。 DOX群には3mg/kgの投与量で1週間に一回、尾静脈よりDOXを投与した。ICP測定法によりラットの勃起機能を評価したところ、1週間後ではICP/MAPが0.71±0.09とControl群(0.66±0.07)と比べても変化は見られなかった。DOX投与の2週間後でもICP/MAPが0.56±0.07と有意な変化は見られなかった。一方、DOX投与の4週間後にはICP/MAPが0.34±0.06と有意な低下が観察された。 以上の結果より、DOX投与を繰り返すと勃起機能の低下が引き起こされる可能性が示唆された。今後は分子生物学的手法により、障害発生メカニズムを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、抗がん剤の中でもドキソルビシン(DOX)の投与により男性性機能障害を引き起こすことが判明した。この研究成果により、勃起障害モデルの作製が可能となったため、次年度以降では障害発症のメカニズムの解明につなげることが可能となる。さらに男性ホルモンに着目した新規治療法の確立へと発展させることができるため、本年度における研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、抗がん剤の中でもドキソルビシン(DOX)の投与により男性性機能障害を引き起こすことを世界で初めて明らかにすることができた。本研究では、DOX投与の2週間後まではラットの勃起機能に変化が見られなかったが、4週間後では勃起機能の有意な低下が観察された。DOXは累積投与により心毒性を引き起こすことが知られており、本研究でも同様に累積投与量が影響を及ぼしている可能性が考えられる。 勃起障害モデルの作製が見られたことから、次年度では障害発症のメカニズムの解明につなげ、さらに男性ホルモンに着目した新規治療法の確立へと発展させていきたい。
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