2017 Fiscal Year Research-status Report
大気圧プラズマ照射によるマウス生殖細胞および受精卵活性化法の開発
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17K11242
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 佳子 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 特任助教 (30732739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中潟 直己 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (30159058)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 卵子 / 受精卵 / 体外受精 / 発生率 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大気圧プラズマの照射により、老齢マウスの卵子および受精卵のバイアビリティを高め、ヒト生殖補助医療へ応用可能な研究の基盤作りを目指すことを目的とし、今年度は「1.受精率や胚発生率が上昇する卵子および受精卵への大気圧プラズマ照射法を開発する。」ことを目的として研究を行った。老齢雌マウスの卵子は採取するまでに約1年の飼育が必要であり、採卵数が非常に少ないことから、採取までの飼育期間が離乳までの約4週間と短く、当研究室で開発した超過剰排卵誘起法を用いることにより、非常に多数の卵子を採取可能な若齢雌マウスを用いて、今年度の条件検討を行った。 培養液中の受精卵へ数分から数十秒のプラズマ照射を行い、培養を続けたところ、ほとんどの卵が死滅あるいは発生を停止した。そこで、胚発生へ障害のないプラズマ条件を決定するため、プラズマ処理後、培養液を交換し、その影響を調べた。 使用するディッシュ、培養液およびその液量、プラズマの照射時間・距離について詳細な検討を行い、最適条件を決定した。採卵卵子塊あるいは受精卵へのプラズマ直接照射では、体外受精率および胚盤胞期胚発生率は照射無のコントロール区と同等あるいは若干低下し、その効果を確認できなかったため、直接照射ではなく、プラズマ処理培養液で卵子や受精卵を処理し、その影響を調べた。採卵卵子塊の処理では、体外受精率および胚発生率はプラズマ処理無の培養液を用いたコントロール区とほぼ同等であったが、受精卵の処理では、コントロール区に比べ胚発生率が上昇した。この受精卵を移植したところ、3回の移植実験の結果、コントロール区の平均産子率は35.4%であるのに対し、プラズマ処理区では平均48.8%であった。 今年度は、若齢雌の受精卵を使用し、良好な産子への発生率を得られるプラズマ処理方法を決定することができ、来年度以降の研究を進めるための基盤を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老齢雌マウスの卵子は採取するまでに1年程度の飼育が必要であること、採卵数が非常に少ないことから、今年度は、若齢雌マウスの卵子や受精卵を使用し、条件検討を行った。当研究室が開発した超過剰排卵誘起法では、従来の過剰排卵誘起法を用いるより2-3倍多くの卵子を採取することができるため、動物愛護・福祉の面からみても非常に有用な方法であり、大変効率良く作業を進めることができた。また、今年度はこの超過剰排卵誘起法を用い、老齢雌マウスからの採卵、体外受精卵作製も随時行っており、これらの受精卵は凍結保存している。実験に必要な数の受精卵が保存でき次第、今年度決定したプラズマ処理条件で老齢雌マウス由来の受精卵を処理することにより、培養後の胚盤胞期胚発生率や移植後の産子への発生率を上昇させることが可能か確認を行う。 しかしながら、若齢雌マウス、妊娠・出産適週齢の性成熟雌マウス、老齢雌マウスにおいては、卵子の質が異なる可能性もあるため、上記、3種の雌マウスの受精卵を使用し、プラズマの効果を確認していく。性成熟雌マウス、老齢雌マウス由来の受精卵においてプラズマの効果を確認できない場合には、連携研究者である本学パルスパワー科学研究所の王准教授、浪平准教授から技術協力を得ることにより、装置の開発・改良を含め最先端の技術を用いて研究の推進を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果をもとに、来年度以降は成熟雌マウス、老齢雌マウス由来の受精卵においても胚盤胞期胚への発生率や産子への発生率を上昇させることが可能か確認を行う。また、大気圧プラズマの照射では活性酸素種の産生やミトコンドリアへの障害を考慮する必要があるため、酸化ストレスの測定やミトコンドリアの膜電位測定を行い、大気圧プラズマ照射の影響をプラズマ処理培養胚の細胞内変化により調べる。 発生胚における酸化ストレス測定やミトコンドリア膜電位測定は、既報が少なく、条件検討から行う必要があるが、貴重な老齢雌マウスの卵子や培養胚を条件検討に使うことは困難であることから、来年度も飼育期間が短く、1匹の雌マウスから多数の卵がとれる若齢雌マウスの卵子や胚を用いて測定のための条件検討を行う。マウス受精卵や培養胚で測定実績のない測定マーカーも多数存在するため、どのマーカーや測定法が本研究に適しているか、正確な測定が可能かを検討しながら研究を進める。 プラズマの照射により、酸化ストレスの障害が出ている場合には、抗酸化物質の使用を検討し、より細胞内障害の少ない方法を模索する。また、卵子の質にはミトコンドリアのDNA及び活性が関与している可能性がある、チトクロムCオキシダーゼ活性や脱水素酵素活性、ATP測定などによりミトコンドリアの活性測定を行い、プラズマ照射によるミトコンドリア活性上昇の有無を確認する。プラズマ処理による細胞内の影響を確認しながら、成熟雌マウス、老齢雌マウス由来の受精卵においても胚盤胞期胚発生率や産子への発生率を上昇させることが可能か検証する。
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Research Products
(7 results)