Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸がんおよび前がん病変の患者の頸管粘液中において4種類のmiRNA(miR-126-3p,-20b-5p,-451a,-144-3p)が病変の進行に伴い増加していることが明らかとなった。統計解析を行ったところ、正常とCIN1では有意差が認められないが、CIN2以上の病変では有意に異常値を示した。次に検査としての性能を調べるため、異常値のカットオフ値を決定し、病変の検出感度、特異度を調べたところ、浸潤がんの病変を検出する感度はmiR-126-3p,-20b-5p,-451a,-144-3pにおいてそれぞれ0.81, 0.74, 0.83, 0.87であり、特異度はそれぞれ0.91,0.93,0.91, 0.89であった。陽性尤度比はそれぞれ、9.0, 10.57, 9.22,7.91陰性尤度比はそれぞれ0.21,0.28,0.19,0.15であった。この成績は補助診断としては有用であることを示している。 このmiRNA中でmiR-126-3pを子宮頸がん由来培養細胞に強制発現させると細胞の遊走能、浸潤能が抑制されることがわかった。そこで、miR-126-3p の標的経路であるPI3K/PDK1/AKT 経路に関わるタンパクの発現レベルを解析したところ、miR-126-3p を導入することで、p85b, p110a, p-PDK1, p- AKT, p-GSK3b, CyclinD1, MRCKa, ROCK1, p- PLCg1の発現レベルは低下した。一方、細胞死に関わるBad, Bax は増加したが、Bcl-xL は低下しており、アポトーシスを誘導していると考えられた。miR-126-3pを細胞内に強制発現することでPI3K/PDK1/AKT経路が抑制されるとともに細胞死が誘導されることから、この経路をターゲットにした新たな分子標的治療開発の可能性が示唆された。
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