2017 Fiscal Year Research-status Report
耳鳴モデル動物の皮質可視化による聴覚野の皮質過剰補正の検証
Project/Area Number |
17K11336
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
細川 浩 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80181501)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 聴覚領 / 光学測定 / 繰り返し音 / 周波数バンド / サリチル酸 / モルモット |
Outline of Annual Research Achievements |
サリチル酸を人や動物に過剰投与すると急性の耳鳴を生じることが知られている。サリチル酸の過剰投与により、末梢では、蝸牛電位の低音部と高音部が減少し、中音部は変化しなかった。下丘、内側膝状体、聴覚皮質の細胞外記録による研究では、高い音圧では神経活動が増大するが、低い音圧では無変化で、その閾値も変化しなかった。直接聴覚皮質や扁桃体にサリチル酸を付加すると細胞外電位のみ大きくなり、閾値は変化しないことや皮質の顆粒層への電流の流入が増加することが報告された。特に、聴覚皮質では、耳鳴音の周波数に対応した特徴周波数を持ったニューロンの神経活動が上昇すること、また他の特徴周波数を持ったニューロンも耳鳴の周波数に同調するように変化することが報告された。 我々は、最近非侵襲的に皮質の神経活動を時空間的に測定できる光学的測定法を用いてモルモットでの周波数バンド内の活動や繰り返し音特性を調べた。左聴覚領の広さが、右聴覚領より大きいこと、繰り返し音特性が左右聴覚領で異なることを報告した。 本研究では、サリチル酸過剰投与下で繰返し音応答特性がどのような時間経過で変化するかを調べた。 サリチル酸付加前は、第一ピークと第二ピークの高さの比による繰返し音特性は、右脳がcut-off周波数8Hzの鋭いベル型特性を示した。しかし、サリチル酸付加後2-3 時間では、左脳の特性が改善し、逆に右脳は低下して、9 時間後には、左右ともにバンドパス型の特性に変化した。さらに左右聴覚領の広さを比較すると9時間後には同じ大きさになっていた。この結果は、周波数バンド内での左右聴覚野の情報処理を考察する上で非常に興味深い。今後左右聴覚領の周波数バンド内の情報処理の違いを統計的に調べていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サリチル酸過剰付加による機能的変化として、皮質の自発放電の上昇と耳鳴の発生が実験動物で報告されている。しかし、皮質の機能的な変化についてはよくわかっていない。光学的測定法により、聴覚皮質中心聴覚領(一次聴覚野とDC野)の周波数バンド間距離が左脳の方が右脳より大きこと、繰返し音応答特性の右脳優位であることをすでに報告した。本年度は、繰返し純音(8kHz)の応答特性が耳鳴発生に伴いどのように変化するか、2-3時間後、5-6時間後、8時間以降で左右の皮質で調べた。その結果、5-6時間後までは、特性の左右差は保たれているが、8時間以降では同じ特性になることが分かった。また、その時の周波数バンド距離を調べると左右差は減少し、同じになることも分かった。耳鳴が生じることと左右の機能差の消失との関連は、耳鳴の発生機序を考える上で非常に興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度研究の結果、サリチル酸過剰投与で、左右聴覚領の機能差が消失することがわかった。本年度は、FM音(周波数バンドを横断する音)応答特性の左右差が、サリチル酸過剰投与後にどうなるのか検討する。すでに、光学的測定を用いてFM応答特性の研究を実施し、FM応答特性も左右差が存在することを報告している。今回は、サリチル酸過剰付加後にどのように左右の特性が変化するかを調べる。 FM音応答の時空間表示の応答様式の計測 持続時間100msで音圧75dBSPLの純音の周波数を0.5,1,2,4,8,16 kHz変化させたときの左聴覚領の中心領域の神経活動の時空間変化をカメラで可視化する。次に持続時間100msの上行FM音(初期周波数0.5kHz、最終周波数16.5kHzの線形増加)、下行FM音(初期周波数16kHz、最終周波数0.5kHzの線形減少)に対する中心領域の神経活動をカメラで同様に可視化する。次に、サリチル酸を腹腔内投与し、1-2時間後、4-5時間後、8-9時間後の同じ音刺激下の神経活動を可視化して記録する。同様に右聴覚領で同様な実験を行う。以上により、耳鳴動物の皮質の上行FM音および下行FM音による活動スポットの動きから求めたFM変調速度特性の時間変化および左右差が明らかになる。
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Causes of Carryover |
移管された光学測定カメラのセットアップのため、光学測定の周辺機器制御装置作成が遅れた。そのため制御装置作成のための予算が使用できず次年度使用額が生じた。今年度は制御装置を早急に作成する。
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Research Products
(4 results)