2018 Fiscal Year Research-status Report
角膜炎症におけるインフラマソーム発現 -オートファジーとの関連-
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17K11468
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
崎元 暢 日本大学, 医学部, 准教授 (20465272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山上 聡 日本大学, 医学部, 教授 (10220245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 角膜炎症 / インフラマソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内パターン認識受容体であるNLRP3(NACHT, LRR and PYD domains-containing protein 3)の活性化を引き金とするインフラマソームの発現亢進が、様々な炎症病態に関連することが最近明らかとなっている。本研究では角膜炎症とインフラマソームとの関連を明らかにすることを目的として、WTマウスおよびNLRP3ノックアウト(KO)マウスに対しLPS点眼、またはアルカリ外傷を作製し角膜炎症を惹起することで、角膜炎症におけるNLRP3インフラマソームの役割について検討した。 昨年度は、両モデルのWTマウスにおけるインフラマソーム関連因子であるNLRP3、アダプター蛋白ASC、Caspase-1、IL-1βの発現亢進を認め、KOマウスにおける角膜実質中の好中球浸潤抑制、さらにアルカリ外傷モデルのKOマウスにおける角膜混濁抑制を示した。 今年度は、LPS点眼モデル・アルカリ外傷モデルの双方において、KOマウスでのIL-1β・MMP-9陽性細胞抑制を免疫組織化学的検討を用いることで、さらにIL-1β・MMP-9の遺伝子発現抑制をレーザーマイクロダイセクション・リアルタイムRT-PCRを用いてそれぞれ示した。また、アルカリ外傷モデルにおけるKOマウスでの好中球走化性のケモカインの網羅的な発現抑制をPCRアレイで示した。 これらのことから、角膜炎症においてNLRP3インフラマソームは好中球依存性にIL-1β・MMP-9発現を誘導するという結論に達し、上記成果をまとめたうえで海外誌に論文投稿し現在査読(再査読)中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NLRP3ノックアウトマウスを用いて、LPS点眼・アルカリ外傷という2つの角膜炎症モデルにおいてNLRP3依存性の炎症が関与していることを示したことがおおむね順調に進展していると判断した最大の要因である。 インフラマソームは、細菌菌体成分、尿酸結晶等の微小粒子、細胞死の際に放出されるDNA 等のDAMP(damage-associated molecular pattern)、紫外線と非常に多岐にわたる因子により活性化され、オートファジーによる制御を受ける。その活性化に際してはこれら誘導因子を細胞内に貪食することでインフラマソームが誘導されるとされており、その主座となる細胞はマクロファージが最も報告されているが、その後好中球もインフラマソームが発現することが報告されるようになった。 本研究では、NLRP3 KOマウスを用いることで、角膜炎症においてはNLRP3インフラマソームはマクロファージでなく好中球優位に誘導されること、好中球を介したIL-1β・MMP-9発現によって角膜炎症を惹起することを明らかにすることができた。そして、これらの結果を論文投稿できたこともおおむね順調に推移していると判断した根拠である。 一方、角膜炎症の臨床検体を用いた検討、培養角膜細胞を用いた検討はまだ行うことができておらず、次年度の課題と考えている。また、インフラマソームの抑制因子であるオートファジーの検討も培養角膜細胞を用いて行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
インフラマソームの抑制因子としてはオートファジーによる制御が挙げられる。角膜炎症におけるオートファジーの役割は明らかではない。一方、角膜においてはアクネ菌(P.acnes)を原因とした非感染性の角膜潰瘍であるフリクテン性角膜炎を発症することがあり、原因は感染アレルギーと考えられていた。皮膚科領域においては、尋常性痤瘡の起炎菌でもあるP.acnes の菌体成分であるpeptidoglycanを刺激因子として、皮膚線維芽細胞におけるインフラマソーム発現を亢進することが報告されている。本研究でも培養ヒト角膜上皮細胞・角膜実質細胞に対してpeptidoglycan を投与し細胞内ROS、NLRP3、ASC、caspase-1、IL-1β の発現挙動をウエスタンブロット法で検討するとともに、上述の実験系においてオートファジー関連蛋白の発現について、免疫組織化学的検討とウエスタンブロット法を用いてmTOR、Atg7、LC3発現を検討し、アクネ菌とインフラマソームとの関連を検討する予定である。 また、角膜炎症においてNLRP3依存性の好中球浸潤が生じることが明らかになった一方、アルカリ外傷モデル角膜においてはNLRP3ノックアウトマウスでは逆に浸潤が亢進するという結果が得られたため、マクロファージ誘導に関するケモカイン・サイトカイン発現とインフラマソーム関連因子の検討を行っていく。 これらインフラマソームの上流・下流因子について角膜における挙動は全く不明であり、それらが明らかになることで今後の治療への応用も可能となってくると 思われる。
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Research Products
(1 results)