2018 Fiscal Year Research-status Report
新規ヒト脂肪組織間葉系幹細胞を用いた糖代謝制御機構の解明と高品質な脂肪細胞の創製
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17K11559
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
森山 博由 近畿大学, 薬学総合研究所, 准教授 (90581124)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 脂肪 / 解糖系 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、Notchシグナルが制御する解糖系を介した幹細胞性維持について詳しい分子機構を明らかとした。その結果、Notchシグナルは、脂肪由来間葉系幹細胞hASCにおいて、NF-kBの活性化を促進することにより、解糖系因子の発現を上昇させ、結果嫌気的解糖に傾くことが明らかとなった。さらに、Notchシグナルはp53の活性化を抑制し、解糖系を制御することを明らかとした。また、p53の活性抑制は、同時にNF-kBシグナルを促進させ、そのことがp53の抑制によるTPI、GLUT3の上昇につながっているものと考えられた。これらp53、NF-kBの嫌気的解糖系への関与は、細胞外フラックス解析によっても証明された。 さらに、当該年度は、NotchによるHIFの活性化を明らかとした。Notchシグナルが活性化すると、HIFタンパク質の明らかな蓄積は観察されないものの、HIFの転写活性が上昇することを見出した。さらに、HIFの活性化は嫌気的解糖系の促進を促すことも細胞外フラックス解析によって証明された。また、Notchが制御するp53, NF-kB、HIFのノックダウンを行うことにより、hASCの老化、活性酸素種の蓄積、細胞増殖、分化が制御されることも見出した。さらに、嫌気的解糖系阻害剤により、hASCの幹細胞性が損なわれることを見出した。 以上のことから、hASCを5%酸素濃度下で培養することによりNotchシグナルが上昇し、p53の抑制、NF-kB、HIFの活性化を介した嫌気的解糖系への傾きが起こり、hASCの幹細胞性が維持されることが明らかとなった。これらの結果はStem Cells and Development誌に掲載された。 さらに、当該年度は、hASCをより単一に樹立するため、CD31-CD34+CD45-フラクションよりsingle cell RNA-seqを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、NotchシグナルがどのようにしてhASCの嫌気的解糖系を制御しているか、詳しい分子機構を調べることを目的とした。その成果はStem Cells and Development誌に論文掲載するに至った。さらに、当該年度はSingle Cell RNA-seqを試み、脂肪由来間葉系幹細胞のマーカー探索に対する一歩を踏み出した。そのため、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度によって得られたNotch-解糖系シグナル関連因子、さらにsingle cell RNA-seqで得られた表面マーカーを指標にしたHx-hASC の亜集団峻別を行い、生体になじむ高品質な脂肪由来間葉系幹細胞集団の単離と評価を行う。 当該年度の探索によって得られた遺伝子と代謝経路に関して、実際にそれらが脂肪細胞分化能の亢進に関与しているのかin vitro で検証しフィードバックする。実証できた分子を指標にHx-hASCの亜集団を分別し、3 次元ヒト皮膚培養系を改編した方法等を用いて機能的な脂肪細胞に分化できるか評価する。これをもとに、Hx-ASC ならびに細胞ソースである脂肪由来間葉系幹細胞集団の単離を試み、高品質で均一なヒト脂肪由来間葉系幹細胞樹立を図る。 さらに、解糖系代謝経路だけでなく、例えばケトン体代謝等、別の代謝経路にも着目し、幹細胞におけるあらたな代謝経路を見出したいと考えている。 これらで得られた責任分子や表面マーカーにより細胞を分別する。分離には、細胞外基質による親和性等の選択培養やセルソーター等を用いる。膜表面タンパク質では細胞にシグナルが入るなどうまくいかない場合は、代謝経路を利用した分離・濃縮法に切り替える。その場合は、代謝経路を促進もしくは阻害する薬剤・化合物・核酸等を加え、細胞が増殖能・分化能を獲得するような代謝経路にのるようにする。こうして得られた細胞は、改編3 次元ヒト皮膚培養評価系やNOG マウス等に移植し,in vivo 脂肪分化評価・安全性試験を行う。 また、これらの系を指標に、ヒト生体に適応する脂肪組織評価系の一つとしての確立を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度は窒素ガス発生器の購入を予定していたが、窒素ガスを購入することで代替出来たため、その分の費用が持ち越しとなった。また、来年度は実験動物を用いた実験を予定しており、それに伴う動物飼育代等がかかることが予想され、次年度で使用することとなった。さらに、来年度はsingle cell RNA-seqで得られたhASCの候補マーカー探索のため、抗体を新たに購入する必要が生じ、次年度で使用することとした。
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Research Products
(7 results)