2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞障害性を示すアンギノーサス群連鎖球菌における可動性遺伝因子の存在意義
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17K11615
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田端 厚之 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (10432767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友安 俊文 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (20323404)
長宗 秀明 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (40189163)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アンギノーサス群連鎖球菌 / Streptococcus anginosus / 可動性遺伝因子 / プラスミド / Toxin-antitoxin system |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、ヒト口腔常在性の日和見病原菌であるアンギノーサス群連鎖球菌(AGS)に属するStreptococcus anginosus subsp. anginosus(SAA)が保有する可動性遺伝因子の諸特性を明らかにすると共に、その病原性との関連についても検討することを目的としている。初年度にあたる本年度は、可動性遺伝因子としてプラスミドに注目し、まず、SAAが保有するプラスミドの配列情報およびその分子特性を明らかにした。具体的には、本研究室が保有するSAAのプラスミド保有株のうち、8株について次世代シーケンサーを用いてde novoゲノム解析を行い、プラスミドの全塩基配列情報を得た。得られた配列情報に基づいてプラスミド上の遺伝子(ORF)の探索を行うと共に、その特徴付けも行った。その結果、SAAが保有するプラスミドは10個のORFから構成され、各プラスミドの塩基配列は互いに高い相同性を示した。このプラスミドの複製ユニットを探索した結果、複製タンパク質をコードするORF1、プラスミドの安定維持への関与が推測されるToxin-antitoxin systemをコードするORF9とORF10、さらにそれらのORFの間に存在する反復配列であるireronが複製必須ユニットであることを特定した。 AGSにおけるプラスミドの保有に関してはこれまでに報告が成されておらず、その実態は不明であったが、本年度の研究によりSAAが保有するプラスミドの諸特性を初めて明らかにすることができた。細菌が保有するプラスミドには薬剤耐性遺伝子や病原因子遺伝子の伝播に関わるものもあり、ヒト常在性の日和見病原菌におけるプラスミドの保有の有無やその分子特性を把握することは臨床的にも重要であり、本研究の意義は大きいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、研究実施計画に記載していた内容に従って順調に各検討を実施することができたことに加え、それぞれの検討結果として、本研究の目的を達成するために重要且つ有益な成果および情報を得ることができた。特に、本年度に行った次世代シーケンス解析は、近年では一般的となった企業委託解析ではなく、学内の共用研究機器を利用して研究者本人が解析サンプルの調製や解析を行うことにより、初期の計画よりも多くの株について検討を行い、ドラフトゲノム情報を取得することができた。これによって、より多くのSAAが保有するプラスミドの全長配列を明らかにすることができ、それらの配列情報に基づいた各株由来のプラスミドに関する様々な検討を効率的に行うことができた。その成果の一つとして、SAAが保有するプラスミドは配列情報の保存性が非常に高いことが明らかとなり、これらのプラスミドはSAA特有のプラスミドであることが示唆された。 また、本研究の立案のきっかけとなった、SAA臨床株0430-08株から見出されたプラスミドpSAA0430-08については、その分子特性に関する詳細な検討を順調に進めることができ、各ORFの転写翻訳プロファイル、プラスミドコピー数、さらにはこのプラスミドの複製維持に必須の最小ユニットを明らかにした。これらの成果については、国際学会や国内学会(全国大会)で発表すると共に、英語論文としても報告することができた。 以上の成果を総合して評価すると、本年度の研究は「当初の計画以上に進展している」という評価でも遜色ないが、次世代シーケンスによるプラスミド保有株のゲノム配列情報の詳細な解析や他の株との比較ゲノム解析、およびSAA由来プラスミドの複製ユニット以外のORFの機能などについてはまだ検討中の内容もあり、このような現況を総合的に判断して「おおむね順調に進展している」の区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は当初の研究計画に基づいておおむね順調に進展させることができたので、平成30年度以降も当初計画に従って進めて行く。具体的には、SAAが保有するプラスミドの伝達に関する諸検討を平成30年度に行い、さらに、このプラスミドの保有と宿主細菌株の病原性に関する検討について平成31年度に展開する予定で考えている。 具体的な研究内容として、平成30年度では、SAA由来プラスミドの株間およびAGSの菌種間における伝達機構に関する検討を行う。これまでに、SAAなどのAGSにおいても、肺炎球菌などと同様にフェロモンペプチドの存在下において形質転換感受性を示すというという特徴が確認されているので、この特徴とSAA由来プラスミドの伝達に関して検討を行う。なお、オリジナルのSAA由来プラスミドでは薬剤耐性遺伝子をコードするORFの存在が確認されず、薬剤耐性を指標とした株間伝達の評価が難しいので、遺伝子組換えの手法を用いて作製した薬剤耐性マーカー遺伝子を挿入した改変プラスミドを構築して検討に用いることも考える。このような検討より、SAA由来プラスミドの伝達・伝播に関して検討を行う。さらに、SAAにおけるプラスミド保有株のほとんどが、ペプチド性溶血毒素であるStreptolysin Sの産生によりβ溶血性を示すという特徴を併せ持つことをヒントにし、プラスミドの保有とSAAの細胞障害性との関連についても検討を行う。そして、平成31年度に予定している「プラスミドの保有と宿主株の病原性に関する検討」に向けての有益な情報を得ることができるように研究を進展させて行く予定である。加えて、平成29年度計画の中でまだ検討中である事項に関しても、引き続き検討を進めていく。 なお、現時点では研究計画の変更の必要や予定は無い。また、研究を遂行する上で支障を来すような課題なども無く、当初計画に従って進めていく。
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Research Products
(3 results)