2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K11624
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (20190100)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Hertwig上皮鞘 / Malassezの上皮遺残 / 細胞遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hertwig上皮鞘(HERS)からMalassezの上皮遺残(ERM)が形成されるメカニズムを解明するために、歯根成長過程におけるHERS細胞の動態について観察した。 生後14日齡のk14cre/Rosa26R tdTomatoマウスから下顎を摘出し、固定・脱灰後、組織を透明化し、蛍光実体顕微鏡で観察した。根尖には赤色蛍光を持つHERSが維持されている一方で、歯頸側ではHERSの断裂が観察されERM形成過程にあることが確認されたが、教科書に記載されているような網目状のERMは観察できなかった。そこで器官培養下リアルタイムイメージング技術を用いて観察を行ったその結果、HERSから一部の細胞が離脱し、周囲にある歯根膜組織へ活発に移動する遊走パターンが捉えられた。 細胞の動きをより詳細に検討するため、このマウス由来のHERS細胞株(HERS02-T)と歯根膜細胞との共培養によるライブイメージング撮影を行った。HERSの細胞集団から周囲の歯根膜組織の中に遊走するHERS由来細胞(Tomato陽性細胞)移動パターンを詳細に検討した結果、1)細胞はコロニーから遊走する方向へゆっくりと伸長し、その先端に複数の細胞質突起を形成しながら移動を開始する。2)細胞集団から離れるとすぐに細胞は素早く移動する。3)その遊走細胞が近傍の細胞へ接触すると移動を停止して、細胞形態を球形に変化させる。4)再度、接触面と反対側に細胞が伸長し、他の細胞との接触がなくなると再び速い速度で移動する、というパターンを繰り返していた。この結果は、少なくともHERS細胞の一部が contact inhibition of locomotionと考えられる細胞動態を示しながら、歯根膜中へ遊走し、ERMの形成に関わることを示唆すると考えられた。現在さらにアレイトモグラフィー法を用いて、遊走細胞の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
器官培養によるリアルタイムイメージングで遊走するHERSを捉え、さらにHERS細胞と歯根膜細胞の共培養による細胞培養系で、HERSから離脱した細胞がcontact inhibition of locomotionと考えられる遊走パターンを示しながらMalassezの上皮遺残形成に関わることを示唆する結果を得るところまで、実験は進んでいる。 また、次のステップであるアレイトモグラフィー法による解析の予備実験も進行中で、これまでのところ予定通り進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
予備実験としてk14cre/Rosa26RtdTomatoマウスから摘出した臼歯のHERSをアレイトモグラフィー法により解析したところ、薄切した際に、このマウスの細胞における赤色蛍光が弱く、アレイトモグラフィー法でうまく捉えられないことが判明したため、現在、免疫組織化学的手法を用いて蛍光強度を強め、HERSから遊走する細胞をアレイトモグラフィー法で捉えるために必要な条件検索を行っている。現在までのところ、2次電子像でHERS周辺の組織を広い範囲でとらえること、かつ同時に個々の細胞での細胞内構造を捉えることに成功しており、今年度中に、試料作成法に改良を加え、強度を増した蛍光(上皮細胞の特定)を持つ細胞で、同時に微細構造も観察するというアレイトモグラフィー法の実験条件を確立し、遊走細胞の突起形成や細胞骨格の分布と遊走方向などとの関連性について、解析する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、諸事情により、年度後半で所属大学内の別分野研究室へ移動することとなった。次年度に移動先の研究室で滞りなく研究を行うためには、異動先の実験室の環境に合わせた実験消耗品を準備したほうが効率的であると考えたこと、また初年度に予定していたアレイトモグラフィー法の予備実験において、試料作成の条件を変更する必要が判明したことから、条件検索が完了するまで当初予定していた消耗品の購入を抑えた方が有効であると考えたこと、以上2点の考えから次年度に繰り越すこととした。 しかしながら、研究室移動後も実験室や実験装置などは確保できている。また改良を必要とする試料作成においても、すでに年度末で行った予備実験において解決策が判明しており、今年度使用予定の研究費と前年度からの繰越金を合わせて、抗体やアレイトモグラフィー法の為の消耗品等の購入に当てる予定である。
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Research Products
(1 results)