2018 Fiscal Year Research-status Report
水素水を応用した薬物性歯肉増殖症の新規治療法・予防法の開発
Project/Area Number |
17K11685
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
竹内 麗理 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (60419778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有川 量崇 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50318325)
伊藤 耕 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (20419758)
田口 千恵子 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (80434091)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬物性歯肉増殖症 / 水素水 / 炎症 / 動物モデル / ラット / 歯肉線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物性歯肉増殖症は、薬物(抗てんかん薬フェニトイン、免疫抑制薬シクロスポリン、血管拡張薬ニフェジピン等)や炎症反応刺激などが原因となり、歯肉線維芽細胞の過度の増殖、歯肉コラーゲンなど細胞外基質の堆積を生じることで発症すると報告されている。研究の最終目標は、薬物性歯肉増殖症の新規治療法および予防法を開発することであり、本研究では水素水を用いて実験を行った。水素水は全身的な炎症反応の動物モデル実験により抗炎症作用をもつことが証明されているが、歯肉組織に対する効果は明らかとなっていない。 本年度には、昨年度作製した、口腔粘膜の炎症モデルラットを使用し水素水の抗炎症効果を確かめた。ラット舌表面に加熱した六角棒スパナを接触させ炎症反応を誘発し、まず上皮下結合組織へと及ぶ上皮欠損による潰瘍形成、上皮下結合組織や筋組織の高度な壊死・変性、潰瘍部を中心とした好中球浸潤といった炎症症状の発生を確認した。そして炎症部位に水素水を適用し、43種類の炎症関連遺伝子に対する水素水の影響をDNAマイクロアレイ法により網羅的に解析した。その結果、水素水は6つの因子(ICAM1、IFNG、IL12A、IL1B、IL6、TNF)のmRNA発現量を水素水非適用群の50%未満に減少させることを確認した。一方、その他37遺伝子では水素水適用群と非適用群に大きな差は認められなかった。さらに、これら6遺伝子のmRNA発現に対する水素水の影響を、リアルタイムPCR法によって定量的に調べたところ、IL6において対照と比較し顕著な減少を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivo実験で口腔粘膜の炎症モデル動物を作製し、in vitro実験で薬物性歯肉増殖症の発症メカニズム解明のために培養歯肉線維芽細胞を用いて研究を行い、双方で進歩が見られた。 口腔粘膜の炎症モデルとしてはラットの舌に局所的な炎症症状を誘発することに成功した。このモデルを使用して水素水の抗炎症効果を確認したところ、水素水は炎症性因子ICAM1、IFNG、IL12A、IL1B、IL6、TNFのmRNA発現を抑制することを見つけた。 また、薬物性歯肉増殖症の発症メカニズム解明の研究では、歯肉線維芽細胞にフェニトインを作用させるとアポトーシスが抑制されることを認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
水素水の抗炎症効果を確認し、その詳細なメカニズムを明らかにするために、口腔粘膜の炎症モデルラットで引き続き実験を行い、水素水がmRNA発現に影響を及ぼした炎症性因子(ICAM1、IFNG、IL12A、IL1B、IL6、TNF)のタンパク質発現をWestern Blot法により解析する。また、IL6受容体の活性化、JAK-STAT経路のJAK1/2・STAT1/3、MAPキナーゼ経路のSos1・Rasなどへの水素水の影響を調べる。 薬物性歯肉増殖症の発症メカニズム解明の研究では、歯肉線維芽細胞におけるアポトーシスのミトコンドリア制御経路に対するフェニトイン・シクロスポリン・ニフェジピンの影響を、カスパーゼやその上流下流の制御因子のタンパク質発現をWestern Blot法により測定することで調べる。対象因子にはイニシエーターカスパーゼ(Caspase-2、-8、-9、-10、-11、-12)、エフェクターカスパーゼ(Caspase-3、-6、-7)、シトクロムC、Smac/Diablo、AIF、HtrA2、EndoG、Akt、p90RSK、Bad、FoxO、Bimなどを考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度までに実施したラットを用いた動物実験および培養細胞による実験から得られたサンプルを使用し解析を行ったため、ラットや細胞を新たに購入する必要が無かった。試薬等の消耗品についても昨年度までに必要な品を大多数購入していたため、新たな購入品は僅かであった。国際学会の旅費を支出しなかった。 次年度再び、口腔粘膜の炎症モデル及び薬物性歯肉増殖症のモデルでラットを使用する。また、日本国外で開催される国際学会(IADR 97th、Vancouver、Canada)での発表を予定しているので、旅費の支出を計画している。
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