2019 Fiscal Year Research-status Report
水素水を応用した薬物性歯肉増殖症の新規治療法・予防法の開発
Project/Area Number |
17K11685
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
竹内 麗理 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (60419778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有川 量崇 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50318325)
伊藤 耕 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (20419758)
田口 千恵子 日本大学, 松戸歯学部, 専修研究員 (80434091)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬物性歯肉増殖症 / 水素水 / 炎症 / 動物モデル / ラット / 歯肉線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物性歯肉増殖症は歯肉が肥厚し咀嚼障害や審美障害を引き起こし罹患者に心理的ストレスを与えるなど、日常生活の質を低下させる疾患である。その原因薬物として、抗てんかん薬フェニトイン、免疫抑制薬シクロスポリン、血管拡張薬ニフェジピンなどが知られている。また、歯牙のない歯肉部に増殖は生じず、増殖にはプラークの蓄積と炎症反応の惹起が影響することも分かっている。発症機序は、薬物と炎症刺激が原因となり、歯肉線維芽細胞が過度に増殖し、歯肉コラーゲンなど細胞外基質が堆積することであると報告されている。細胞が増殖し、分化する過程において、正常な細胞周期およびアポトーシスは重要であり、これらはcyclin-dependent kinases (CDKs)、 cyclins、 CDK inhibitors、 retinoblastoma protein (RB)、 Bcl-2 family proteins、 caspasesなどによって制御されている。 本年度は、薬物性歯肉増殖症の発症メカニズムを解明するため、初代培養歯肉線維芽細胞を用いて、血清飢餓状態でのフェニトインの細胞周期・アポトーシス制御因子への影響を調べた。その結果、フェニトインがCyclin Dの遺伝子発現を上方制御する傾向を認めた。血清飢餓状態の細胞では通常、Cyclin発現が抑制され、細胞周期がチェックポイントで停止する。この結果から、フェニトインは細胞周期G1チェックポイントでの停止を阻害することが考えられた。さらに、フェニトインが歯肉線維芽細胞に対しアポトーシス細胞の発現を抑制することが認められた。また、ラット舌表面に加熱した六角棒スパナを接触させ炎症反応を誘発し、炎症の病態モデルを作製した。そして、炎症部位の組織を採取しタンパク質を抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vitro実験で薬物性歯肉増殖症の発症メカニズム解明のために培養歯肉線維芽細胞を用い、in vivo実験で口腔粘膜の炎症モデル動物を作製し、研究を行った。薬物性歯肉増殖症の発症メカニズム解明の研究では、培養歯肉線維芽細胞にフェニトインを作用させるとCyclin D遺伝子の発現が亢進されること、アポトーシス細胞の発現が抑制されることを認めた。口腔粘膜の炎症モデルラットを作製し、炎症組織とその周囲からタンパク質を抽出した。 培養歯肉線維芽細胞のアポトーシスを制御するミトコンドリア経路におけるカスパーゼやその上流下流の制御因子(イニシエーターカスパーゼ、エフェクターカスパーゼ、Bad、Bim)の遺伝子発現に対するフェニトインの影響を解析した。シクロスポリン、ニフェジピンの影響は未確認である。また、シトクロムC、Smac/Diablo、AIF、HtrA2、EndoG、Akt、p90RSK、FoxOについても測定予定であったが未実施である。炎症病態モデルラットからTotal RNAを抽出し、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカイン(ICAM1、IFNG、IL12A、IL12B、IL1B、IL6、TNF)の遺伝子発現を解析した。これらのタンパク質発現も解析する予定であったが未実施である。また、水素水の抗炎症効果及びそのメカニズムを明らかにするため、炎症病態モデルラットに水素水を適用して、口腔内組織からTotal RNA及びタンパク質を抽出し、IL6受容体の活性化、JAK-STAT経路のJAK1/2・STAT1/3、MAPキナーゼ経路のSos1・Rasなどへの水素水の影響を調べる実験計画を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
薬物性歯肉増殖症の発症メカニズムを解明するため、細胞周期・アポトーシス制御因子、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインのタンパク質の発現を解析する。培養歯肉線維芽細胞から抽出するタンパク質を用いて、アポトーシスのミトコンドリア制御経路におけるカスパーゼやその上流下流の制御因子に対するフェニトイン・シクロスポリン・ニフェジピンの影響を、Western Blot法によるタンパク質発現解析によって調べる。対象因子にはイニシエーターカスパーゼ(Caspase-2、-8、-9、-10、-11、-12)、エフェクターカスパーゼ(Caspase-3、-6、-7)、シトクロムC、Smac/Diablo、AIF、HtrA2、EndoG、Akt、p90RSK、Bad、FoxO、Bimなどを考えている。また、炎症病態モデルラットから抽出したタンパク質を用いて、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインのICAM1、IFNG、IL12A、IL1B、IL4、IL6、IL10、TNF、TGFなどの発現をWestern Blot法により解析する。 薬物性歯肉増殖症の新規治療法および予防法を開発するために、水素水の抗炎症効果を確認し、その詳細なメカニズムを明らかにする。そのため、口腔粘膜の炎症モデルラットを用いて実験を行い、炎症関連因子ICAM1、IFNG、IL12A、IL1B、IL4、IL6、IL10、TNF、TGFなどのタンパク質発現への水素水の影響をWestern Blot法により解析する。また、IL6受容体の活性化、JAK-STAT経路のJAK1/2・STAT1/3、MAPキナーゼ経路のSos1・Rasなどへの水素水の影響も調べる。
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Causes of Carryover |
本年度はラットを購入しなかった。凍結保存した細胞を用いたため、細胞を購入しなかった。試薬等の消耗品の購入費を抑えることができた。 次年度には、Western Blot法によるタンパク質発現解析を行うため、イニシエーターカスパーゼおよびエフェクターカスパーゼのCaspase-2、Caspase-3、Caspase-6、Caspase-7、Caspase-8、Caspase-9、Caspase-10、Caspase-11、Caspase-12など、そしてシトクロムC、Smac/Diablo、AIF、HtrA2、EndoG、Akt、p90RSK、Bad、FoxO、Bimなどのアポトーシス制御因子、さらに炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインのICAM1、IFNG、IL12A、IL1B、IL4、IL6、IL10、TNF、TGFなどの抗体を購入する。再び、口腔粘膜の炎症モデル及び薬物性歯肉増殖症のモデルでラットを使用する。 日本国外で開催される国際学会(25th iADH International Congress、Acapulco、Mexico、2020. September 23-26)での発表を予定しているので、旅費の支出を計画している。
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