2017 Fiscal Year Research-status Report
チロシンキナーゼ阻害分子 Sprouty による口腔癌リンパ節転移制御機構の解明
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17K11692
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 講師 (10553290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
福田 隆男 九州大学, 歯学研究院, 助教 (80507781)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BMP2 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌はリンパ行性転移をきたす疾患で、近年その罹患率は増加傾向である。一般に癌の転移には血管上皮成 長因子 (VEGF) シグナルや上皮間葉転換 (EMT) が関与していることが知られており、一方でチロシンキナーゼ 阻害分子である Sprouty が VEGF シグナルや EMT 制御に関わっていることが知られているが、癌のリンパ節転 移における Sprouty の作用は不明である。今回、リンパ行性転移を特徴的な転移様式とする口腔癌において、Sprouty がその転移機構にどのように作用しているかを in vitro で解析することを本年の研究として遂行した。 まず、扁平上皮癌細胞株における Sprouty の発現であるが、EGF 刺激および FGF 刺激により、 Sprouty2 および Sprouty4 が転写誘導されてくることが RT-PCR の結果で分かった。 一方、癌の増殖に関わる因子として、TGF-β スーパーファミリーが知られており、Sprouty1 がそのシグナルを抑制することが示されている。そのため、Sprouty2 もしくは Sprouty4 もこのシグナル伝達経路に関わっている可能性があり、in vitro の系では未だそのことが解明されていないため、マウスの細胞系でこれを確認した。その結果、TGF-β スーパーファミリーの中の 1 つである BMP2 刺激において Sprouty2 が Smad 1/5/8 の活性化を抑制することが分かった。 今後、ヒトの細胞株における Smad 経路抑制機構に関しても確認し、扁平上皮癌細胞株において MAPK 経路および Smad 経路の両面から Sprouty の制御機構を解明する計画を立てている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
細胞内シグナル伝達は様々な分子がクロストークを行うことにより、その増殖機構が制御されている。扁平上皮癌も例外ではなく、当初、Sprouty と関連のある EGF 刺激に着目して研究を開始した。その理由として、扁平上皮は文字通り上皮であり、上皮刺激因子である EGF が深く関与することが予想されたこと、また、EGFR の阻害するモノクローナル抗体である Cetuximab が分子標的薬として口腔癌の患者に利用されていることがあげられた。しかしながら、前述のように癌細胞の増殖にはさまざまなシグナルが関与している。今回、新たに TGF-β スーパーファミリーの 1 つである BMP シグナルの下流で Sprouty2 が抑制性に作用することが予測されたため、こちらの解析に時間を費やすこととなった。しかしながら、この結果は本研究の解析目的である、上皮-間葉転換(EMT)において、 TGF-β が関わっているとの報告が多数あることから、Sprouty が Smad 経路を抑制する事を示すことができたのは今後の研究展開に大いに有用であると考える。 本年度の後半はヒトの細胞での再現性を確認しており、この結果を論文にて報告すべく、労力を要しているため、当初の予定より遅れているとする区分となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに Sprouty2 が関与することが明らかになった TGF- β スーパーファミリーにおけるシグナル伝達経路も含めて、今度は Sprouty を遺伝子導入した細胞内での MAPK 経路や Smad 経路における増殖活性を in vitro の系で解析を行う予定である。これにより、転移に際して EMT が関与するという報告がある中で、その EMT にSprouty がどのような関与をするのか?を解析できると考える。そのためにはマウスの実験系で得られた結果を、ヒトの系で再現できるかをまず検討することが必要であり、ヒトの切除検体を用いて Sprouty が癌細胞の転移にどのように関わっているかを検討する。 また、一方で癌の転移には MMP などの癌細胞自身が分泌するサイトカインが関与することから、これらの分泌機構に Sprouty がどのように制御するのかを解析することで研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、細胞の供与やもともと研究室に存在する試薬・消耗品等を用いることで実験を遂行することができた。 また一方で、今回新たなシグナル伝達経路での Sprouty の関与を解析した途中結果は、それ自体これまで報告がないことから、早いうちに論文にて報告する必要性が生じた。当初予定には入れていなかった、研究の途中で得られた結果をオープンアクセスジャーナルに投稿するに当たり、追加実験や投稿費に関する費用として基金化された本年度の助成金を充てることを予定している。さらに、今回論文作成をするに当たり新たな PC 購入に助成金を充てる予定である。
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