2017 Fiscal Year Research-status Report
口臭抑制と歯周病減弱能を備えた、新たな硫化物吸着セラミックス多孔体の開発
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17K11722
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
堀田 正人 朝日大学, 歯学部, 教授 (10157042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横川 善之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20358310)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70513670)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 硫化水素 / セラミック多孔体 / ハイドロタルサイト / 亜鉛置換型ハイドロタルサイト / F.nucleatum / 細菌増殖試験 / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
セラミック多孔体であるMgHDTのMgをZnに置換したZnHDTを合成し,Fusobacterium nucleatum ATCC25586(F.nucleatum)を用いて, 供試菌培養下にZnHDTを混入した場合の硫化水素濃度を測定し, 硫化水素産生量を抑制する効果と供試菌に対する増殖度を検討した. 硫化水素測定には F.nucleatumを培養した密閉容器にMgHDT, ZnHDT試料をそれぞれ加えたものとHDTなしのものを試料とし, 密閉容器内の硫化水素を測定した. 測定時間は2時間おきに8時間行い, 合計3回実施した. 細菌増殖試験は培養した密閉容器に4mlずつ分注後, MgHDT, ZnHDTを別々に加え, 37℃で嫌気培養を行った. 菌液を接種後, 培養液のOD値を分光光度計にて経時的な増殖曲線を求めた. また,細菌増殖曲線にてOD値が1.0に到達した時間における生菌数をColony FormingUnit(CFU)にて算出した.得られた値は, 一元配置分散分析(ANOVA)と多重比較検定Fisher’s PLSD test(α=0.05)にて有意差検定を行った. その結果,F.nucleatumに各種HDTを混入した試料の硫化水素濃度はZnHDTが2時間後で硫化水素は検出されなかった. MgHDTは4時間後まではHDTなしの場合と同程度の硫化水素濃度であったが,8時間後にはHDTなしの硫化水素濃度に比べて低下した. F.nucleatum発育に与える影響はMgHDTの発育曲線は菌への発育の影響はなかった. ZnHDTは4時間後から発育の影響を認めた. また, ZnHDTはCFUにおいてもコロニー数の低下を認めた.F.nucleatumが産生した硫化水素濃度の低下はZnHDTの硫化物に対する吸着性によるものと細菌の増殖を抑制する作用によることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はほとんど計画どおりの進行であった。以下にその概要について述べると①ZnHDTの形態制御は共沈法によりZnHDTを合成し, ZnHDTであることをX線回折(XRD), フーリエ変換赤外分光分析, FE-SEM観察, EDS分析して確認した。②ZnHTDのZn溶出および硫化物吸着評価は硫化水素水中でのZnHDTからのZn溶出量をキレート滴定により求め, ZnHDT1.0g の150mL milli-Q水への溶出量は0.82mgであった.気液共存での硫化水素吸着実験の結果, 2時間後にはZnHDTを投入した密閉容器中の全硫化水素量5.45μmolは0μmol(100%減少)となった.③歯周病原因菌による硫化物吸着評価においては細菌由来の硫化水素濃度を測定するために,歯周病関連細菌のFusobacterium nucleatum ATCC25586 (F. nucleatum),Porphyromonas gingivalis ATCC33277, Prevotella intermedia ATCC25611, 齲蝕病原性菌のStreptococcus mutans ATCC25175を用いたところ, F. nucleatumが最も硫化水素を産生したので. F.nucleatum培養下にZnHDTを混入した場合の硫化水素を測定し,硫化水素産生量を抑制する効果と供試菌に対する増殖度を検討した.その結果, 2時間後には硫化水素は0となり, 検出されなかった.また, F. nucleatumの発育に与える影響を培養液のOD値と生菌数(CFU)で評価し, 菌の増殖を抑制していた.当初は金銀パラジウム合金の黒化現象の低減によりZnHDTの硫化物吸着性を評価するとしていたが, 直接, 培養液中の気液共存での密閉容器中の硫化水素産生量の抑制効果を評価することとした. ④ZnとFeに対する細胞応答評価については現在, 細胞の炎症応答について検討中である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は前年度に引き続きほぼ計画どおり, 以下の概要について研究を推進していく予定である. ①ZnHDTの形態制御については透過型電子顕微鏡による観察, 回折図形による結晶面の評価, リートベルト解析による結晶構造の精密化を行うこととする. ②ZnHTDのZn溶出および硫化物吸着評価においては吸着前後の構造変化をFT-IR分光法, X線回折データを用いたリートベルト解析により詳細に検討をする. Zn溶出について前年度はmilli-Q水への溶出を測定したが, ヒト唾液への溶出についても検討する予定である. ③歯周病原因菌による硫化物吸着評価において前年度は硫化水素について検討したが, 本年度は他の臭気物質の吸着挙動について検討するとともに, 硫化水素については論文投稿を考えている. ④ZnとFeに対する細胞応答評価については今年度は細胞の免疫・炎症応答について検討中であるが, 次年度も検討し, 報告できる結果を出すことを考えている. また, この他に前年度の結果から, 臨床応用に有用であることが示唆されたことから, マウスピース材料のEVA(エチレン・ビニール・アセテート)シートにZnHDTを40Wt%含有させたマウスガードを作製し, ヒト口腔内に2時間装着させて, ヒトの口臭(特に硫化水素)の抑制効果を示すかどうかの臨床試験を計画し, 平成30年度中に実行する予定である.
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