2018 Fiscal Year Research-status Report
複雑な乳歯根管系の制御-確実な歯根吸収抑制と吸収部修復機構発現の解明-
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17K11951
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八若 保孝 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (60230603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 光一 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (50580932)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯学 / 乳歯 / 根管治療 / 根管洗浄 / 水酸化カルシウム製剤 / pH / 歯根吸収 / セメント質 |
Outline of Annual Research Achievements |
根管治療において、根管内壁に生じるスミア層の除去が重要で、根管貼薬剤の効果を根管、根管内壁、象牙細管を通しての根管歯質、歯根外表面へ有効に拡散させることができる。これまでに、根管洗浄として、有機質溶解作用のある次亜塩素酸ナトリウムを使用した超音波洗浄が、乳歯ではスミア層除去に有効であること、永久歯では、硬組織脱灰作用のあるEDTAを使用した超音波洗浄を加えることで、適切なスミア層除去ができることを示すことができた。 適切なスミア層除去により、根管貼薬剤である水酸化カルシウム製剤の効果が歯根外表面にまで拡散することが示され、前述した根管洗浄法が、複雑な乳歯根管系の制御の最も重要な点であることが把握された。 根尖性歯周炎の治療は、炎症のコントロールと病的歯根吸収のコントロールの両面での対応が必要である。根尖性歯周炎は、超音波を用いた根管洗浄により貼薬剤の効果が有効に発揮され、炎症のコントロールの確実性が増加した。歯根吸収においても、吸収を示す歯根外表面へのアルカリ性の拡散により、酸性環境が必要な歯根吸収部を中和させることによる吸収抑制の可能性が考えられる。 この点を明らかにするため、細胞培養系および実験動物系の2系統で研究を進めている。細胞培養系では、歯根吸収モデルを作製し、培養系破骨細胞による歯根吸収環境を再現することができた。このモデルを用いて、水酸化カルシウム製剤の歯根吸収に対する効果を把握することを目的に準備を進めている。実験動物系では、ラット第一臼歯を使用した歯根外部吸収を惹起させる方法を構築することができた。ラット第一臼歯歯根吸収に対する水酸化カルシウム製剤の効果を組織学的に観察し、水酸化カルシウム製剤の効果により、歯根外部吸収は抑制されること、セメント質の肥厚(添加)が観察されることを明らかにすることができた。今後は、細胞培養系の研究を中心に進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞培養系に関しては、計画に比較し進行が遅れているが、実験動物系に関しては、最終年度(3年目)までの計画として考えていた実験ならびにその結果を2年で得ることができた。そのため、当初の実験計画とは進捗状況が違うが、相殺すると、計画通りに進んでいると考えている。細胞培養系の実験については、歯根吸収モデル作製が律速段階であり、この段階に時間と労力が必要となる。担当していた大学院生が一昨年度諸事情により退学したため、この部分の進行が遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞培養系の実験については、歯根吸収モデル作製が律速段階であり、この段階に時間と労力が必要となる。担当していた大学院生が一昨年度諸事情により退学したため、この部分の進行が遅れていた。今後は、新しい大学院生の協力を得て、計画的に進めていく。動物実験系が円滑に進んだため、細胞培養系の実験に集中し、作製した細胞培養系の歯根吸収モデルを用いて、水酸化カルシウム製剤の歯根吸収に対する効果の把握を精力的に実施していく予定である。今後の細胞培養系の実験から得られた結果と、これまでに得られたヒトでの各種根管洗浄法の結果、ラット動物実験系での結果を合わせ、本研究をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究に参加し、謝金支出を準備していた大学院生の退学、その後の新しい大学院生の参加が困難であったことから、予定していた謝金支出が昨年度も“0”になったことによる。昨年度までの予定していた謝金分を実験費に追加すること、ならびに本年度は、新しく参加する大学院生への謝金支出が実施できることから、研究費を適正に使用予定である。
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