2017 Fiscal Year Research-status Report
急性期意識障害患者の脳が賦活化する「さする」刺激の効果
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17K12228
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 晶子 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (90424275)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | さする / タッチ / 呼吸 / 脳波 / オキシトシン / 覚醒 |
Outline of Annual Research Achievements |
触れるケアは疼痛緩和や不安の軽減、リラクゼーション効果に繋がり、快の感情を引き出す効果があるとされている。本研究は、健康な成人(平均年齢22±1)女子10名、男子10名を対象とし、誰でも簡単に行える背部への「タッチ」と「さする」刺激が、被験者の呼吸数、脳波、唾液、心理的指標に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。 各刺激前後の安静を4分、背部への「さする」「タッチ」刺激1分を測定した。実験体位は左側臥位とし、安楽マクラで安楽な姿勢を維持した。下肢から腹部にかけてはタオルを一枚かけた。実験中は閉眼とした。実験環境は室温24±1℃、湿度45-60%で実施した。 その結果、背部への「さする」刺激は「タッチ」よりも有意に呼吸数が増加した。この結果は2017年度までに行われてきた意識障害患者及び健常者での実験と同様の結果が導きだされた。脳波は、「タッチ」後安静時にθ波が有意になった。唾液の成分分析としてオキシトシンを使用した。オキシトシンは触れられた時に感じる快感情を評価できる成分である。オキシトシンの最小検出濃度は0.11ng/mlであり、20名中5名しか検出濃度に達している値が認められなかった。5名の傾向として、刺激後安静時のオキシトシン濃度が刺激前の安静時と比較し、高い傾向を示した。心理的指標であるVASは刺激の種類に関わらず、安静時より快方向へ増加した。このことから側臥位背部による1分間の「さする」刺激は、呼吸数を増加させ覚醒状態となるが、血圧を落ち着かせ、心理的にも落ち着く有用な刺激である可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は健常者への「さする」刺激時の体位・時間・部位を特定するために、生理学的指標及び心理的指標を用いて明らかにすることを目的としていた。本研究は健常者20名に呼吸・脳波・唾液及び心理的指標であるVASを用いて実験を実施し、分析を行うことができたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的はだれでも簡単に実施できる「さする」刺激の効果を明らかにすることである。2018年度は刺激時間を1分間で実施したが、オキシトシンの有用な効果がみられなかった。そこで今後は刺激時間を3分に延長し、その結果を明らかにし、学会発表及び論文作成を行うと伴に、健常者で実施したプロトコルと同様の方法で、意識障害患者さんへの実験を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度痛み刺激を与える機器を購入し、その効果を実験結果から明らかにする予定であった。しかし今年度様々な研究会や学会に出席し、発表や交流集会からタッチングの効果は痛み刺激を与えなくても、刺激方法及び時間や部位を変えることで、有意な結果がでることが理解できた。その後学会等で得られた知識を踏まえ実験プロトコルを考え実験を行った。その結果から呼吸数に有意差を導くことができた。今回新たな評価指標として唾液採取によるオキシトシンを追加した。1分間の刺激では20名中5名が刺激後安静時に上昇傾向を示した。今後は時間や刺激部位を変更し、多幸ホルモンであるオキシトシンやストレスホルモンであるコルチゾール等の試薬購入資金とし、「さする」刺激の効果を明らかにしていきたい。
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