2018 Fiscal Year Research-status Report
急性期意識障害患者の脳が賦活化する「さする」刺激の効果
Project/Area Number |
17K12228
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 晶子 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (90424275)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | さする / タッチ / 側臥位 / 呼吸数 / 脳波 / オキシトシン / VAS |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は健常者を対象とし、「さする」と「タッチ」刺激が、被験者の呼吸数、脳波、唾液、感情に及ぼす影響について明らかにした。対象は健康な女子6名、男子5名計11名とした。「タッチ」刺激は被験者の肩甲骨中央部に触れ、「さする」刺激は被験者の肩甲骨中央部から頸部までを2秒に1回の速さでさすった。刺激前後の安静を6分間、背部刺激を3分間測定した。体位は左側臥位とした。呼吸数は呼吸ベルト(MLT1132: Respiratory Belt )を胸部に装着し、データはPower Lab16SP(AD Instrument)に記録した。脳波測定はフューテックエレクトロニクス社製ブレインプロライト(型番FM-828)とパルラックスライト(型番PUL-LT)で行った。θ波、α波、β波の周波数帯の測定はFP2部位で行った。その結果呼吸数は「さする」刺激14.7±2.7breath/minが「タッチ」刺激13.8±2.4breath/minよりも有意に増加した。(P=0.039)脳波の「さする」刺激2.0±3.6μVは「タッチ」刺激4.8±0.9μVよりもαが有意に低下した。(P=0.011)オキシトシン濃度は「さする」刺激20.1±14.1 ng/mlが「タッチ」刺激15.1±5.5 ng/mlよりも高値であったが有意差は認められなかった。心理的指標であるVASは「タッチ」刺激4.4±2.1㎝と「さする」刺激5.6±2.5㎝ともに刺激前安静1.6±2.6㎝時より有意に快方向へ増加した。(P=0.007,P=0.0003)側臥位背部による3分間の「さする」刺激は、呼吸数を増加させ覚醒を促す刺激となる可能性が高い。「タッチ」刺激は呼吸数を低下させα波が有意に高かった事から、リラックス状態を促す刺激となる可能性が高い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は健常者を対象に背部のタッチングについて、呼吸数・脳波・オキシトシン濃度 VASより明らかにした。この結果を基に臨床研究を実施するために倫理審査にかけ、承認された。対象となる被験者が現れれば、速やかに実験が行える状況にあるため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在健常者において背部を3分間「さする」刺激は、呼吸数を有意に増加させ、オキシトシン濃度を増加させる刺激であることが明らかになった。この実験結果を基に、今後は意識障害患者へ同様の刺激を与え、その効果を明らかにし、意識回復の一助になる刺激を特定していく。
|
Causes of Carryover |
今年度の実験で、分析を行う機器を購入する予定であったが、昭和大学にある機器及び試薬で分析が実施できた為、今年度の使用額は次年度に繰り越しとなった。次年度はオキシトシンのみでなく、その他のストレス指標も検討するための試薬を購入し、分析を行う。データ分析に必要なソフトや論文掲載料等に使用していく予定。
|
Research Products
(2 results)