2019 Fiscal Year Research-status Report
地域防災・減災のための「やさしい日本語」の教育と普及に関する研究
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17K12613
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 教授 (30271084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | やさしい日本語 / 外国人 / 防災 / 減災 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、災害時に外国人住民支援に有用な「やさしい日本語」の重要性と活用方法を一般に周知し、外国人、日本人を問わず地域の防災および減災に地域全体で取り組む基盤を構築することを目的としている。今年度は、「やさしい日本語」について知識のない防災士や学生に調査をおこない、その結果について考察・分析をおこなった。防災士の方は、防災についての知識はあっても、地域住民の多様性という面で、たとえば65歳以上の人口比率が、香川県が全国平均より高いこと、外国人住民の比率が四国内ではいちばん高く、全国平均と同じであること等は知らなかったという回答がほとんどであった。また、日本語教育について学んだことのある学生も、防災のチラシをやさしくかきなおす作業は、単にことばをやさしくするだけではなく、重要なポイントをえらびぬくスキルが必要で、それほど簡単ではないことが明らかになった。もともとの防災のチラシも、作成者側が重要と思うことがかならずしも外国人にとって優先的に知らされるべき内容とは限らないということも、詳細に見ることで明らかになった。 香川県は、四国の中でも外国人住民が多いこと、人口に占める比率が全国平均とほぼ同じで1パーセントを上回るという点についても、生活レベルで実感しているという人(たとえばコンビニの店員さんに増えていることなど)とそうでない人の間では意識の差が大きく、防災に関するチラシでも、「いちばん伝えたいこと」と「外国人にわかりにくいこと」を抽出するためには、「やさしい日本語」の知識とは違う部分で求められる能力があると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の実績は主として、防災士の方々を対象とした「やさしい日本語」の講習と、外国人住民の防災に関する意識調査の実施と分析、および日本語教育について学んだ経験のある学生に実施した一般家庭向けの防災チラシを「やさしい日本語」をつかって作成しなおす調査の実施および分析である。 防災士の方々への意識調査は、「やさしい日本語」の講習会とかねて実施することができた。参加者17名はほとんどが「やさしい日本語」について初めて知った、という回答で、当該の講習会に参加してもらうことで、本研究の目的の一つである、「やさしい日本語」を広く知ってもらうことをわずかではあるが実施できたように思う。 また、一般家庭に配布された防災チラシを「やさしい日本語」をつかって書き直すタスクでは、前年度に実施した4コマ漫画のリライト調査に加えて別のスキルが必要とされることが明らかになった。それは、文を短く、表現をやさしく、といったことに加えて、外国人にあまり知られていない防災知識を予測したうえで情報に含めることであり、さらに文章が長くならない工夫も必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度となるため、4年間の研究の総括をおこなう予定である。当初の予定では、「やさしい日本語」のワークショップ等も検討していたが、新型コロナウィルス肺炎の流行状況もあり、かならずしも実施できるとはかぎらない状況にある。その場合はオンラインによるアンケート調査の実施についても計画している。 また、大学の授業も遠隔システムにはなっているが、留学生のクラスもあるので、日本で生活する外国人の一部ということで留学生の防災意識のより詳しい調査分析をおこなったり、通常の防災チラシやピクトグラムを見てどのように解釈するか等の調査および分析をおこなうことで、「やさしい日本語」を使うときのポイントを見いだすことを考えている。前提となる自然災害も、出身国・地域によって異なることも想定されるため、その点についての調査・分析も実施したうえで、外国人住民に対する効果的な情報伝達の方法、そして地域の防災にいかに連動させるかについて考察をおこないたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、日本語教育関係者、ボランティア、教育関係者等を対象として、「やさしい日本語」の講習会が、新型コロナウィルス肺炎の流行により、中止となり、当初計上していた会議室使用料等が未使用となったため、残額が生じた。次年度開催できるようであれば実施し、もし開催がむずかしい場合は「やさしい日本語」をよりわかりやすく示したチラシ等、あるいは地域の防災に関するハンドブックに「やさしい日本語」を取り入れたものを作成し、配布する予定である。
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Research Products
(2 results)