2018 Fiscal Year Research-status Report
原子力発電所事故に伴う損害賠償制度に関わる実証的研究-新たな重要課題を踏まえて-
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17K12625
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
久保 壽彦 立命館大学, 経済学部, 教授 (00454512)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子力発電所事故 / 電力改革 / 損害賠償制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度立命館大学社会システム研究所重点プログラム『グローバル社会における格差是正と法制・税財政に関する研究』プロジェクトに関与し、本年度は岩手県陸前高田市・大船渡市への現地実査、福島大学うつくしまふくしま未来支援センターへの訪問をおこない、これを通じて震災からの復興状況の確認・原発事故への損害賠償の現状と課題の確認を行った。上記プロジェクトに係って、以下の研究発表と論文公表を行った。 (研究発表)2019年3月8日(金)、第37回立命館大学税財政研究会、テーマ『原子力損害賠償制度専門部会の提言と他の動向について』、(論文)「2018年度立命館大学社会システム研究所重点研究プログラム報告書ーグローバル社会における格差是正と法制・税財政に関する研究』、テーマ:『原子力損害賠償制度専門部会の提言と他の動向について』5頁-18頁、2019年3月。 2018年8月原子力損害賠償制度専門部会の審議を経て、『原子力損害賠償制度の見直しについて(案)』に関するパブリックコメントが実施され、筆者は、原子力事業者に関する規模別の損害賠償制度の構築について意見を述べた。具体的には、パブリックコメントにおいて、被害者への完全な損害賠償の実施と電力の安定供給のためには電力事業者を経営規模別に区分し、それぞれに適合した損害賠償制度の構築が必要との意見を述べた。その集計結果によれば、このような意見を述べたのは筆者のみであったが、上記意見に対し、最終報告書(見直し)では「原子力事業者が法的整理に入った場合の現在の枠組みが機能するかどうか課題である」旨の文言が追記されていることから、筆者の意見が参考とされたのではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマである「原子力損害賠償制度専門部会の審議動向の検証」について、2018年8月に『原子力損害賠償制度の見直し(案)』が提案され、パブリックコメントがなされた。それに対し、筆者は、本研究のテーマに沿った原子力事業者の規模別損害賠償制度の必要性について意見した。その結果、最終報告書に筆者の見解が一部採用された。 また、2018年度立命館大学社会システム研究所重点研究プログラム報告書『グローバル社会における格差是正と法制・税財政に関する研究』、テーマ:『原子力損害賠償制度専門部会の提言と他の動向について』5頁-18頁、2019年3月、において、上記見直し案に対する筆者の見解を整理したうえで論文として公表した。これらを理由とする。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度、2018年度ともに順調に研究成果を積み重ねていることから、2019年度は本研究の最終年度として、原子力事業者の経営内容と損害賠償余力等の分析、さらには現行の損害賠償制度における一般負担金の負担能力および万一事故を発生させた場合の特別負担金の負担能力等を別途分析の上、原子力事業者の規模別損害賠償制度の具体的枠組みの立案、及び法的手続きについて『原子力事業者に関わる更生特例法(仮称)』を立案することによって、新たな制度構築の可能性を追求したい。 また、原子力委員会では、継続して原子力事業者の法的整理について検討される予定とのことであり、この動向についても検証を行いたい。
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Causes of Carryover |
原子力損害賠償制度専門部会の審議状況が最終局面を迎えたことから、同部会の情報収集に注力すべく東京等への出張を控えたため、次年度使用額が生じた。2019年度については、民法の改正による損害賠償制度への影響分析及び原子力事業者の経営内容を把握するための書籍購入(特に、損害賠償制度関係や会社法関係)を行い、さらにはこれらの情報収集を図るべく、東京等で開催される研究会やシンポジウムへの出席及び研究機関との連携を積極的に行っていきたい。
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Research Products
(2 results)