2017 Fiscal Year Research-status Report
地域住民による地域情報資源ディジタルアーカイブ利活用支援に関する研究
Project/Area Number |
17K12793
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
柊 和佑 中部大学, 人文学部, 准教授 (80530659)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域情報資源アーカイブ / 消滅可能性都市 / メタデータスキーマ / 積雪寒冷地 / 地域創成 / LOD / オーラルヒストリー / 地域の記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地方自治体を中心とした「地域の記憶」である地域情報資源をコンテンツとしたアーカイブズの構築およびそのディジタルアーカイブズ化が盛んであり、様々な形態のサービスが誕生している。その一方、それらのサービスを利活用するためのハードルが低いとは必ずしもいえない。 本研究の中心課題は、ディジタルアーカイブを地域住民が自らが使い易いままにアップグレードしながら長い期間利活用できるようにすることである。今後、日本は少子化が進み、地方都市が消滅していくことが予想されている。本研究は、消滅可能性都市が、将来的のために地域の記憶を少しでも残しておくことを目標としている。そのためには、アーカイブのコンテンツの検索や利用に用いられるメタデータ、コンテンツそのものの特性や構造を記述するメタデータを、地域住民にとってわかりやすい表現と結びつけることが収集における基本的課題となる。そして、それに基づいて地域住民が使いやすい方法でアーカイブをアップグレードする仕組みが必要となる。 実際に研究を進める際は、地域コミュニティの知識のナレッジベース化を目標としオーラルヒストリーを中心としたコンテンツ制作手法(つくる)、異なるディジタルアーカイブ間を意味的に結びつける(つなぐ)、地域住民のためのディジタルサイネージなどのディジタルアーカイブ利用支援手法(つかう)を課題カテゴリとして意識した。また、研究を進める際に現れる問題も、どの課題カテゴリに入るのかを意識した。 本年度はすでに蓄えられた地域情報資源のディジタルデータを元に、それを観た地域住民が語る言葉をメタデータ化し、ディジタルアーカイブ全体のメタデータ量を増やすための方法の確立を目標とした上で、実際に稚内に赴き、地域住民の反応及び市区町村の役所の人間とミーティングを行い、過疎地域の意識を調査するとともに、その地を訪れた旅行者の行動を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、地域コミュニティの知識のナレッジベース化を目標としオーラルヒストリーを中心としたコンテンツ制作手法(つくる)、異なるディジタルアーカイブ間を意味的に結びつける(つなぐ)、地域住民のためのディジタルサイネージなどのディジタルアーカイブ利用支援手法(つかう)を課題カテゴリとして進めている。 (1)コンテンツ制作(つくる)カテゴリは、地域住民自身、および援助者が既存のディジタルアーカイブのコンテンツを利用してコンテンツにデータを追加する仕組みの開発するものである。実験を通して収集した地域住民の音声を元に、それらをオーラルヒストリーとして整理するための手法の検討を行った。 (2)意味的リンキング(つなぐ)カテゴリは、ディジタルアーカイブ間の意味的リンキングのために、地域コミュニティの独特の言い回しを含む語彙をメタデータ語彙として共有するための基盤の開発する。稚内市で実施した実験を通して、語彙にする際の問題点の抽出を行った。 (3)利活用支援(つかう)カテゴリは、地域住民・旅行者用コンテンツ利用支援環境の構築するものである。実験を通して、本研究では市民が持つ知識に合わせたコンテンツ分類とアクセス支援、図書館員による市民サービス支援機能実装のための技術について情報を収集し、試作を進めた。 本研究の中心課題は、アーカイブを地域住民が自らアップグレードしながら利活用できるようにすることである。そのため、アーカイブのコンテンツの検索や利用に用いられるメタデータ、コンテンツそのものの特性や構造を記述するメタデータを、地域住民にとってわかりやすい表現と結びつけることが基本的課題となる。平成29年度は、これら基本的課題解決のための情報収集を行いつつ、適宜試作と実験を行うことができた、有意義な年度であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、平成30年度は各テーマの研究を継続し、平成31年度には各テーマごとに開発したデータ、ツールの評価、統合環境に関する議論を中心に行う予定である。 (1)コンテンツ制作(つくる)カテゴリでは、地域住民自身、および援助者が既存のディジタルアーカイブのコンテンツを利用してコンテンツにデータを最大限追加するためのテスト的手法を開発し、そのためのシステムを試作する予定である。 (2)意味的リンキング(つなぐ)カテゴリでは、ディジタルアーカイブ間の意味的リンキングのために、地域コミュニティ語彙を実際に抽出し、語彙を共有するためのシステムを試作する。また、この夏に稚内市で実施する予定の実験を通して、地域住民の活動環境に合わせた語彙の蓄積方法を検討する。 (3)利活用支援(つかう)カテゴリでは、平成29年度から続けている地域住民・旅行者用コンテンツ利用支援環境の試作を進める。また、追加実施する実験を通して、支援機能の必要条件を整理する。また、試作二号機の構築、そのための地域情報資源アーカイブのための検索システムの構築を進める予定である。 これらは全て平成29年度に行った実験から得られた知見を基礎に進めていく。その上で、これら試作中のシステムを統合した地域情報資源アーカイブシステムを構築し、その問題点を洗い出す予定である。
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Causes of Carryover |
本次年度使用額は、実験のための旅費、および謝金について誤差が生じたためである。平成30年度は実験で稚内に赴く回数、人員を調整し、新たな実験計画を構築済みである。
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Research Products
(4 results)