2017 Fiscal Year Research-status Report
学習者の体験をフィードバックとして顕在化させるプログラミング学習支援環境の開発
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17K12804
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷口 雄太 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20747125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共起関係の分析 / エラーの特徴付け / データ構造化 / エラーの普遍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プログラミング学習におけるソースコードのコンパイルエラーが学習者の学習におけるつまづきであるにも関わらず、それが教師視点で顕在化しないという問題を解決することである。エラーの抽象化技術を中心として、学習者と教師の双方を支援して教育全体の改善を目指す。2017年度は膨大に蓄積されているデータの構造化方法の確立と、エラーの特徴付け方法に関して研究を進めた。 コンパイルログデータは非構造化データとして蓄積されており、そのままでは高度な分析を行うことは難しい。そこで、コンパイラの出力に含まれるエラーメッセージやコンテキスト情報、注釈などを抽出し、一定の構造に整形する方法を確立した。また本研究が目指すエラーの抽象化の一環として、エラーメッセージのテンプレート化方法についても開発を進めた。その結果、例えば2017年前期のログデータに含まれる約5万2千種類のエラーメッセージを、247種類にまで集約して同一視することが可能となった。これらのデータに関する処理については今後のデータ解析を迅速に進める上で重要となる。 また、構造化されたデータを用い、学習者が実際にどのようなエラーに遭遇しているのか、またどのようにしてエラーを解決をしようとしているのか分析した。エラーと学習者、エラーと演習課題の間の共起関係を分析した結果、多くの学習者が共通して遭遇するようなエラーの種類は実のところ極少数しかなく、およそ半数のエラーは高々1%の学生しか遭遇せず、3/4のエラーでも高々5%の学生しか遭遇しないことが分かった。逆に過半数の学生が共通して遭遇するエラーは高々5種類程度であった。また、学習者がエラーに遭遇した時に電子教科書のどのページを見ているかについて分析を行い、ページによってエラーが解決するかどうかは比較的明確に分かれることが分かった。これらの結果は今後の研究を進める上で重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、「エラーメッセージからエラーカテゴリを特定する手法の開発」について予定していた。メッセージのテンプレート化という処理の確立により一定の進展があった一方で、具体的なカテゴリ特定手法の開発については十分に進めることができていない。しかしながら、エラーの性質に関する分析により、エラーが少数の普遍的なエラーと、多数の普遍的でないエラーから構成されることが分かったことは、今後の推進方策を決める上で重要な知見であり、研究を十分に進展させたと考える。この結果については国際会議に論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においては、エラーのカテゴリ化に関わる手法の開発を進める。まずはエラーの特徴付けについて検討行い、その際には本年度得られた知見からエラーの普遍性についても考慮する。その後、エラーのグルーピングや分類手法の開発を進める。さらにその結果に基づき、カテゴリと学習日誌の関係性の分析や、実際に教師にエラーをフィードバックする仕組みを開発する段階へと研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
国際会議への論文投稿が遅れたため、旅費の利用が次年度へとずれ込んだ。現在国際会議に投稿中の論文があり、次年度に入り速やかに利用する予定である。また、物品費としては当初予定していた計算機よりも、納期が早く若干性能が低いものを選択した。計算機は拡張可能であり、今後性能を向上させる必要が生じる見込みであるため、次年度以降に予算を使用する予定である。人件費については、データ処理を依頼する予定であったが、依頼内容が変わる可能性があったため実施せず、次年度以降に行う予定である。
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