2017 Fiscal Year Research-status Report
Minyo in Modern Japan: the Society of Japanese Folk Song as a Community of Hobby
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17K13350
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶丸 岳 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (50735785)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民謡社会 / 秋田県 / 民謡大会 / 趣味の共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は秋田県を対象に、民謡が現代社会においていかなる社会を生み出し再生産しているのか、現代日本社会において民謡はいかなる存在なのかを明らかにすることを目的としている。2017年度は4回秋田県を訪れ、秋田県立図書館などで文献資料の渉猟を行うとともに、さまざまな民謡大会の調査を行った。民謡大会の前後では大会主催団体や参加者、民謡教室主催者などの関係者へのインタビューも行なった。 ここから見えてきたのは、多くの民謡大会は1980年代に町おこしとして開かれるようになったこと、その後は主催団体を変えることを含めさまざまな模索と変遷がありつつ現在まで大会が継続していることである。また、参加者については、大会参加において民謡教室に通っていることがほぼ前提となっており、やはり地域の暮らしというより趣味として民謡を歌っている傾向が強いこと、高齢化が進む一方で祖父母と孫のつながりが若手の参加を促していることが明らかになってきた。さらに、高齢の参加者はもっぱら趣味として歌っていることが多い一方、若手に関しては幼少の頃から熱心に民謡教室に通い、大会での優勝を目指していることが見て取れた。現在民謡でプロになるのは極めて厳しいため大半はアマチュアではあるものの、民謡ブームの頃にプロとなり現在まで民謡界を牽引している層からは、若手が今後の秋田民謡を支える世代として非常に期待されているようであった。 文献調査や民謡関係者へのインタビューからは、1980年代の民謡ブームから退潮を続けるなかで、民謡がどのように変化してきたかも見えてきた。民謡ブームの頃に著名となった世代が徐々に亡くなり、民謡の人気も低迷するなかで、民謡の歌い方や民謡社会の在り方が再び変化しつつあるようにも見受けられた。 今後は文献資料の読み込みとともに民謡大会以外の民謡の場についてさらに調査を深めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献や資料収集に関しては、秋田県立図書館を中心として各地の図書館・図書室の資料を集めるとともに、民謡関係者や民謡大会主催者より、1950年代から現代にいたるまでさまざまな資料を提供していただくことができた。これにより秋田県の民謡の変遷をかなり追うことができるようになった。 現地調査に関しては、民謡教室での参与観察はできなかったものの、民謡大会は6つほど調査をすることができ、さらに民謡が歌われる伝統行事についても調査を行うことができた。そこで関係者に大会や行事の来歴や実施体制について細かくうかがうとともに、大会に訪れた民謡教室主催者とコンタクトを取って基本的な教室の情報についてインタビューも行えた。また参加者からは民謡を始めたきっかけや民謡への関わりなどを中心に話をうかがった。以上から、民謡大会調査については当初の予定以上の進展がみられた。 本年度の研究成果については2018年に文化人類学会で口頭発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度もすべての民謡大会を見られたわけではないため、引き続き民謡大会の調査を行うとともに、これまで直接には調査ができなかった民謡教室での参与観察を実施する。前年度に訪問の許可を得ている教室にコンタクトを取り、参加者へのインタビューと、許可を得たうえでの練習の撮影・分析を行う。これによって、大会に参加する歌い手たちが普段どのように民謡と関わっているのかを明らかにする。 資料収集については引き続き行っていく一方、前年度で収集した資料の読み込みと分析がまだ不十分であるため、こちらをより重点的に行っていく。そこから、80年代以降を中心として秋田民謡とその社会がどのように変遷してきたのか、現在の民謡をとりまく状況の歴史的背景を裏付けていく。 成果については文化人類学会以外にも学会発表を行うとともに、論文としてまとめて投稿する。
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