2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13401
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
大石 真由香 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 講師 (40624060)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 万葉集 / 禁裏御本 / 中院本 / 古活字本 / 陽明文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、『万葉集』の活字化への道筋と国学成立の過程を探るため、近世初期における『万葉集』の書写・利用の様相を明らかにし、近世初期という一時代の『万葉集』受容のありようを総合的に捉えることにある。 『万葉集』写本の中でも、寂印成俊本と呼ばれる系統の写本が近世初期の堂上において数多く書写された。寂印成俊本のうち中院本系統の写本は、室町期に今川範政が『万葉集』を校訂し後に禁裏に入った「禁裏御本」の校合を、代赭または紫で書き入れている。この禁裏御本に由来する書入を検討することにより、寂印成俊本の系統関係を見直し、禁裏御本のすがたを復元することが、本研究の主軸である。 本研究の中心となるのは、(1)陽明文庫所蔵「古活字本万葉集」10冊20巻の紫による書入(禁裏御本に直接基づくと思われる書入)についての全巻調査である。これは研究代表者が陽明文庫に通い、継続的に行ってきたものである。平成30年度のうちに、20巻分の調査結果の確認作業を終えた。 また、前年度新たに禁裏御本書入本であることが分かり研究対象として加えた(2)京都大学国語学国文学研究室蔵『万葉集』(零本7冊)の巻二、三について、その調査結果を上代文学会大会(2018年5月27日 於皇學館大学)で報告した。 さらにその後、中院本に属する(3)伝空性法親王筆本(尊経閣文庫蔵)、(4)前田家仙覚本(尊経閣文庫蔵)、(5)岩崎文庫一本(東洋文庫蔵)の三本について各文庫での原本調査および国文学研究資料館のマイクロフィルムを用いての調査を行った。そして、(2)本の性格について、(1)本および(3)~(5)本の調査結果と比較し検討した論文「京都大学国語学国文学研究室蔵『万葉集』について」(『岐阜聖徳学園大学国語国文学』38号 2019年3月)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に所属機関が変わり研究環境が変化したことで、4~7月は陽明文庫への調査が滞ったものの、8月以降は前年度通り月に一度の「古活字本万葉集」の調査を再開することができた。そのため、当該年度末までに当該本の確認作業をすべて終えることができた。また、前年度に新たに研究対象として加えた京都大学国語学国文学研究室蔵『万葉集』の書誌調査の結果について学会発表および論文発表を行うことができたことで、禁裏御本の復元および『万葉集』諸本の系統関係の見直しに向けた基盤を整えることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度のうちに、陽明文庫所蔵「古活字本万葉集」の紫による書入の全巻調査の確認を終えたため、平成31年度はこれのデータ化を目指す。また、上記(1)~(5)本の調査結果を踏まえてさらに詳しく検討することにより、禁裏御本の性格を明らかにし、『万葉集』諸本の系統関係の見直しを進めてゆく。
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Causes of Carryover |
残金はわずかであり、誤差の範囲である。もっとも多くの予算を組んでいた旅費は申請段階の予算との誤差が1万円以下であり、予定通りに研究が進行したと言える。 次年度は最終年度であり、研究成果をまとめるにあたり貴重書の文献複写に多額の費用がかかることが見込まれる。次年度使用額はその費用の一部にあてたい。
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Research Products
(2 results)