2021 Fiscal Year Research-status Report
15~17世紀における日本の海外貿易と国内経済との連関の研究
Project/Area Number |
17K13534
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
OLAH Csaba 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (70646380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遣明船貿易 / 唐物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度の課題を中心に研究を継続した。とりわけ、中世日本における唐物消費や遣明船経営(遣明船派遣に必要な経費のための資金調達)について検討を続けた。その結果、遣明船への資金提供のありかたや帰朝後の抽分銭の処理について新しい見解を示すことができた。遣明使節の公貿易(特に日本物品の明での買取価格をめぐる折衝)および私貿易(特に納品滞納をめぐるトラブルや明の牙行・地方官の関わり)に関する入明記のなかの記事を参照し、以前よりも詳細な分析を行った。その結果、入明記のなかに記されている貿易交渉について、新たな論点を提示することができた。これらの新たな論点は、先行研究を参照して整理し、著書に付け加える作業に取る組んだ。 成果としては、2021年度EAJS(ヨーロッパ日本研究協会)の国際学会(歴史学パネル)で、「Sakugen Shuryo's experience of legal and illegal trade in Zhejiang around the 1540s」というタイトルで報告を行った(Ghent、ベルギー、2021年8月、オンライン開催)。さらに、2018年にBonn大学で開催されたシンポジウムの成果として、「Tribute System and Rulership in Late Imperial China(V&R unipress出版、2022年)」(Ralph Kauz・Morris Rossabi編)という論集が刊行され、「Legal private Trade within the Framework of the Ming Tribute System」というタイトルで執筆した論文が掲載された。これらの研究成果では、日本人による明人との商取引を例に取り上げ、明の朝貢・対外貿易制度における遣明使節の貿易活動の位置づけについて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は主に著書の執筆を行い、成果をまとめる作業に取り組んでいたが、史料や先行研究を再度分析・整理した結果、遣明船経営および遣明船貿易について、再検討の余地があるような内容を見出すことができた。これまでにまとめた著書に補足・修正を行い、新たな内容を反映させた。補足・修正の作業および職務の多忙、コロナ感染拡大による個人的理由のため、執筆作業が予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、唐物消費・唐物流通や遣明使節の貿易活動というテーマで行った分析内容をまとめる作業を続ける。これに加え、ヨーロッパ人の東アジア来航や倭寇と呼ばれた密貿易商人集団の台頭が従来の朝貢体制に影響を与えたかどうか、特に浙江沿海の交易環境や日本遣明船貿易に対する待遇への影響が確認できるのか、福建・広東の交易環境と比較して検討していく。2021年度は、すべての研究成果を著書に反映することができなかったため、2022年度はこれらの論点も付け加えて著書の完成を目指す。また、今年度は、Leuven大学(ベルギー)において、連携研究者Angela Schottenhammerが設立したCrossroads Research Centreのコアメンバーとして、大航海時代における遣明船貿易と東アジア交易の再編というテーマで研究報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
補助事業期間の再延長申請が承認され、研究期間が一年延びたため、次年度使用額が生じた。主に本課題に関する書籍を購入するために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)