2018 Fiscal Year Research-status Report
家族・親族関係からみた沖縄系移民の成立に関する歴史地理学研究
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17K13581
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
花木 宏直 琉球大学, 教育学部, 准教授 (80712041)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 沖縄系移民 / 紐帯 / 言語文化継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,①移民送出のキーパーソンに関する沖縄県内外での調査,②移民と家族・親族に関わる沖縄県内での民俗調査,③移住先・海外の親族成員と送出地域・送出世帯における移民の位置づけに関する調査の,3つの課題を設定した。このうち,平成30年度は,課題②と課題③を関連づけ取り組むことを目的とした。 課題②について,いずれもブラジルはじめ海外各地に家族・親族が居住する,沖縄県八重瀬町富盛地区に本家をもつ具志堅門中と,八重瀬町小城地区に本家をもつ神谷家への,家族・親族の居住地移動や職業の変化などに関する聞き取りと家系図などの資料調査を実施した。また,ペルーに家族・親族が居住する八重瀬町後原地区出身の屋宜家についても,ペルーの家族構成や現在の沖縄県とペルーとの家族との交流の状況について聞き取り調査を行った。 課題③については,具志堅門中をはじめ富盛地区出身者はブラジル・サンパウロ近郊のカショエイラ地区,神谷家をはじめ小城地区出身者はブラジル・サンパウロ近郊のカンポリンポ地区に字単位での集住地域を形成している。そこで,これらの地域での現地調査も行い,彼らが中心構成員であるカショエイラの協和日本人会とカンポリンポ日本人会,および八重瀬町人会の沿革や活動について資料収集もまじえ検討した。あわせて,富盛地区出身の移民1世や2世の数人に対し経歴や職業,沖縄系諸団体の活動への参加状況や,沖縄系に対する認識をはじめ予備的な聞き取り調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は沖縄県に加え,ブラジルでの現地調査が実現できた。その結果,あくまで基礎的な知見ではあるが,富盛地区や小城地区出身のブラジル移民は戦後移民および1世が多く,沖縄県に居住する家族・親族と海外を含む沖縄県外に居住する家族・親族は,比較的密接に連絡を取り合い,共同での家系図作成など特徴的な取り組みもみられた。2世以下でも沖縄語や日本語の運用能力の低下や沖縄系諸団体の活動への参加が減少しているが,デカセギ経験から沖縄県や日本への関心を高めている者や,生育環境の影響で三線など沖縄文化に積極的に従事し沖縄県や日本への訪問を実現する者も少なからずみられることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はブラジル現地調査が実施でき,協和日本人会やカンポリンポ日本人会,八重瀬町人会とのつてが形成された。平成31年度はこれらの団体に対し,移民1世を中心に数人~数十人から聞き取り調査を行う予定である。また,これらの団体の運営記録など一次資料を収集し,団体の活動の推移および沖縄県や日本との関わりについての調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度にブラジルでの現地調査を実施した。この成果を踏まえ,調査先の八重瀬町出身者や調査に協力いただいた八重瀬町の方と調整を進め,令和元年度の秋~冬に2週間程度,ブラジルでの現地調査を行う方向で進めることとなった。その際,八重瀬町の方を1~2人,調査補助として同行していただく予定となった。このため,令和元年度のブラジル現地調査では,旅費等あわせ120~130万円程度の出費がみこまれることとなった。そこで,平成30年度予算より30万円程度残し,令和元年度に活用する。
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Research Products
(3 results)