2021 Fiscal Year Research-status Report
家族・親族関係からみた沖縄系移民の成立に関する歴史地理学研究
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17K13581
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
花木 宏直 琉球大学, 教育学部, 准教授 (80712041)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地割制 / 長子相続 / 父兄出自重視 / 門中 / ブラジル |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度も令和2年度に引き続きブラジル調査を計画していたが、新型コロナウイルスの流行が続いたため実施できなかった。そこで、令和2年度と同様に、沖縄県内および日本国内で可能な調査を引き続き実施した。その結果、本研究で掲げた課題のうち、②移民と家族・親族に関わる沖縄県内での民俗調査と、③移住先・海外の親族成員と送出地域・送出世帯における移民の位置づけに関する調査を中心に、ある程度の成果がみられた。 これらの調査では、ブラジル移民を多数送出した名護市仲尾次地区を事例として、聞き取りをはじめ現地調査を通じて、20世紀はじめ頃の移民送出の萌芽期の動向を当時の家族・親族関係の状況を踏まえ検討した。そして、地割制の廃止と私有財産の成立に伴い、沖縄特有の父系親族集団である門中に代表される家産の長子相続や父兄出自の重視が形成されることに先んじて、本家をはじめある程度資産のある世帯が私有地を売却して渡航費を捻出し海外へ移住したことや、その後門中が組織化されたため、本来は出身地にいるべき本家が海外に居住し、仲尾次地区にいる門中の成員が越境的に儀礼を行う状況が生じたことなど、まさに村落の越境的拡大といえる状況がみられたことが明らかになった。 また、①移民送出のキーパーソンに関する沖縄県内外での調査についても、大正期以降の沖縄県内における移民会社に属さない斡旋業者の動向や、明治中期における自由民権運動家謝花昇と移民送出との関わりについて、実態解明が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、移民送出と出身地区の家族・親族関係の変化に関する実証的検討が進んだ。成果は論文に投稿し査読中で、令和4年度上半期には掲載される目途が立ち、本科研を通じたある程度の集大成的な論文をまとめることができたと考える。 また、移民送出のキーパーソンについても、令和3年夏に、ある程度の集大成的な論文をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は当初海外調査を計画しながら国内調査に切り替えた関係で、当初の予定より旅費の出費が大幅に減り、最終的に20万円ほどを令和4年度に繰り越すことになった。そこで、令和4年度は、補足的な調査研究を進めたい。これまで調査を進める中で、国会図書館憲政資料室ないし沖縄県立図書館に、ペルー・リマ市における1920~30年代の兼城村人会(糸満市)と、1960~70年代頃の羽地村人会(名護市)の議事録一式の複製(原典はペルー日本人移住史料館に有)を所蔵していることが判明した。とくに、前者は第二次世界大戦前の沖縄県出身者の同郷団体の活動が判明する資料として貴重である。これらの資料を活用し、移住先側からみた出身地との相互関係について、実証的検討を進めたい。
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Causes of Carryover |
令和3年度によていしていた海外調査が、新型コロナウイルスの流行により実施できなかったため。令和4年度は国会図書館憲政資料室や沖縄県立図書館への資料調査を中心に使用する。
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Research Products
(3 results)