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2019 Fiscal Year Research-status Report

Memories of War, Conflict and Disaster in Handicrafts and Its Potential for Communicating across Borders: A Focus on Chilean Arpilleras

Research Project

Project/Area Number 17K13588
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

酒井 朋子  神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90589748)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywords記憶 / 政治暴力 / 戦争 / 災害 / 手工芸 / 展示 / チリ / アイルランド
Outline of Annual Research Achievements

本年度はアイルランドと福島県沿岸部にて調査を行い、アルピジェラのアーカイブの視察や、2017年展示「記憶風景を縫う――チリのアルピジェラと災禍の表現」の関係者へのフォローアップ聞き取りなどを行った。また、研究成果の公開に向けて本格的な準備を開始し、本研究課題を中心的題材とする特集や学会報告が、2020年度中に発表される予定である。
アイルランド調査は9月に行った。本研究の主要な分析対象であるチリのタペストリー、アルピジェラのコレクションを有するConflict Textilesを訪問し、新しくアーカイブされた作品や、アーカイブ管理のあり方を見せてもらうと共に、キュレーターのロベルタ・バチチ氏と意見交換や今後の協力体制についての話あいを行った。
11月には福島県の楢葉町にて調査を行なった。2017年展示で取り上げた作品の製作者数名に聞き取りを行うとともに、東京電力福島原発の近隣地区での社会環境について調査を行った。
研究成果公開の準備としては、『社会学雑誌』第37号(神戸大学社会学研究室発行、2020年8月刊行予定)にて特集を企画している。2017年の展示の意義について振り返る内容で、展示後のフォローアップ調査をふまえ、災禍の記憶の展示イベントが社会的に有する意義や、イベントの多様な形態がそれぞれ社会的に有する長所や限界についても考察する。特集の具体的な構成としては、以下のようになる。1)災禍の経験の表現と継承における手仕事活動の意義(代表者・酒井朋子) 2)「争われる空間」(「記憶風景を縫う」展ゲスト・キュレーター、ロベルタ・バチチ氏) 3)「記憶風景を縫う」展仙台展シンポジウム内容書き起こし 4)「生きてあることの証――福田須磨子とギンナン人形・壁掛け」(「記憶風景を縫う」展長崎展現地実行委員・友澤悠季)。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本課題申請段階では、研究期間中にチリの首都サンティアゴでも展示企画を行い、作り手たちの調査も行う予定であった。しかし、新型コロナウィルスの流行にともなう世界的状況のため、2020年度にチリでの展示を行うことは現実的に難しくなった。
一方で、研究成果の発信に関しては、当初の予定より進んでいる。もともと研究成果のとりまとめは2020年度に本格的に取り組む予定だったが、雑誌発行や学会のタイミングのため、2019年度に準備を始めたものが複数ある。たとえば前項で述べた特集論文については準備の大部分を終えている。
また、9月には第10回国際平和博物館会議にて発表を予定している(オンライン開催)。この会議では、大島博光記念館および記念館にアルピジェラコレクションを寄贈した近現代ラテンアメリカ史家の高橋正明氏と協働し、チリの軍事独裁政権時代に日本で起こったチリ人民支援の動きのなかでアルピジェラが日本にも持ち込まれ、販売された経緯について報告する。またアルピジェラの社会的認知が、個人間の国際的なネットワークによって支えられてきていることも報告する。
さらに、本研究内容と深く関連する論文" Humour and the plurality of reality: Comical accounts from interface areas in Belfast "を、ヨーロッパ社会人類学会の学術誌Social Anthropologistに投稿し、現在査読が進行中である。
サンティアゴでの展示企画と調査を見送らざるをえないのは残念だったが、複数の論文および国際学会での発表という形での成果発信は、ほぼ準備や見通しが立っており、当初の計画より早く進んでいる。全体としてみれば、大きな遅滞なく研究が進んでいると言える。

Strategy for Future Research Activity

2020年度は本課題の最終年度であり、研究成果のまとめと発信がおもな研究活動内容となる。このまとめと発信についてはすでに準備を開始している。主要なものとしては、前項であげた雑誌特集と雑誌論文、および国際学会での報告がある。さらにこの国際平和博物館会議での報告内容を、英文にて投稿論文へとまとめる予定である。投稿先はAnthropology Today紙を検討している。もともと日本におけるチリ人民支援運動や、大島博光記念館のアルピジェラ・コレクションの存在については、アルピジェラ研究を行う海外の研究者からも注目されているが、現段階では日本語以外でまとまったものを読むことができない。そうした意味で、国際貢献度の高い論文になると推測される。
また本課題期間の2020年度での終了後、本研究主題は、現在人類学領域で国際的に議論が高まっている倫理と道徳(モラリティ)に関連する研究へとつなげていきたいと考えている。倫理と道徳にまつわる昨今の議論では、グローバル資本主義と徳やモラルとが対立的に論じられることもある(マイケル・サンデル、コント=スポンヴィルなど)。しかし、アルピジェラはフェアトレード的な方法で国際的に売買され、独裁政権による人権侵害という、多分にモラリティに関連するその証言とメッセージとを、広く世界に伝えていった経緯をもつ。そうした意味でフェアトレード的な資本主義のあり方におけるモラリティや倫理的消費の問題を、アルピジェラの歴史を出発点としながら考えていく研究を、本課題終了後に開始したいと考えている。今年度に発表をめざす論文や学会発表は、この方向性を視野に入れつつ構成していきたいと考える。

Causes of Carryover

2月から3月にかけて、福島県にて現地調査を予定しており、そのための予算として残しておいたが、新型コロナウィルスの流行により2月・3月の長距離移動や聞き取り調査は難しくなった。それゆえに余った状態となっている。
この分の金額は、オンラインでのミーティングなどのための機器の購入などにあてたい。

  • Research Products

    (4 results)

All 2019 Other

All Int'l Joint Research (1 results) Journal Article (2 results) Presentation (1 results)

  • [Int'l Joint Research] Conflict Textiles(英国)

    • Country Name
      UNITED KINGDOM
    • Counterpart Institution
      Conflict Textiles
  • [Journal Article] 道徳/倫理の人類学の一潮流を素描する――物語論と徳倫理派人類学との系譜の重なりについて2019

    • Author(s)
      酒井朋子
    • Journal Title

      社会学雑誌

      Volume: 35・36 Pages: 150-168

  • [Journal Article] 丹羽典生編 『〈紛争〉の比較民族誌――グローバル化におけるオセアニアの暴力・民族対立・政治的混乱』2019

    • Author(s)
      酒井 朋子
    • Journal Title

      文化人類学

      Volume: 84 Pages: 366~368

    • DOI

      https://doi.org/10.14890/jjcanth.84.3_366

  • [Presentation] 紛争体験の語りにおける笑いについて-北アイルランド紛争における暴力と日常2019

    • Author(s)
      酒井朋子
    • Organizer
      日本文化人類学会第53回研究大会

URL: 

Published: 2021-01-27  

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