2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13649
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
張 笑男 長崎大学, 経済学部, 准教授 (50711511)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 取締役の責任 / 責任軽減制度 / 会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、会社法上の取締役の責任軽減制度(会社法425条~427条)に関して、直近の会社法改正の下における同制度の解釈論及び立法論の双方について再検討するものである。本研究の方法としては、母法の米国法を中心に外国法との比較研究により、日本法の解釈への手がかりを得るとともに、日本の裁判実務の状況を調査検討し、現行制度の課題を考察した上で、望ましい制度の在り方の提案を行う。 本研究の2年度目である平成30年度は、当初の研究計画に従い、取締役の責任軽減制度に関連する日本及び米国の裁判例及び文献の収集を行い、分析も行った。具体的な成果としては、数少ない日本法の責任軽減制度に関連する裁判例の分析を行い、判例評釈として公表した。これらの研究作業の中で、日本法については、裁判例の蓄積が少なく、同制度の適用の可否を決する「重過失」の意義を含め、解釈に委ねられる点が少なくないことを再認識した。また、監査役についても、同制度の適用の可否が争われた裁判例が現れてきており、取締役のみならず、監査役を対象とした検討も必要であるとの認識に至った。さらに、現在取締役の責任軽減制度に関連する会社役員賠償責任保険制度の法改正が議論されており、責任軽減制度との平仄の検討も必要であるとの認識に至った。これらの問題についても検討し、今後得られた成果を随時公表していく。米国法の研究については、前年度末に掲げた「米国法における誠実義務の分析」を行い、取締役の責任軽減制度が適用されない場合を行為の類型ごとに分類し明らかにした。具体的な成果としては、米国法における誠実義務に関する研究成果を含め、近時の研究成果を学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画に従い、予定通り日本法及び米国法の文献及び裁判例の調査を行い、分析も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、随時最新の文献及び裁判例のフォローアップをしながら、米国法で得られた知見を手掛かりにして、日本法における望ましい制度の在り方及び立法趣旨に合致した解釈論の提示を試みたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(52039円)が生じたのは、研究で使用する図書の一部を購入する予定だったが、資料複写や図書館間の資料貸借サービスを利用したため、予定よりも少ない費用で目的を達成できたためである。次年度使用額は、今後図書を購入するための費用に充てる。
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