2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13649
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
張 笑男 長崎大学, 経済学部, 准教授 (50711511)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 取締役の責任 / 責任軽減制度 / 会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、会社法上の取締役の責任軽減制度(会社法425条~427条)に関して、令和元年会社法改正(2019年改正)の下における同制度の解釈論及び立法論の双方について再検討するものである。本研究の方法としては、母法の米国法を中心に外国法との比較研究により、日本法の解釈への手がかりを得るとともに、日本の裁判実務の状況を調査検討し、現行制度の課題を考察した上で、望ましい制度の在り方の提案を行う。 本研究の4年度目である令和2年度の具体的な成果として、前年度の研究実績及び先行研究を基礎に、現行制度の課題の考察を複合的な視点からさらに深化させた。具体的には、責任軽減制度のうち、取締役の対会社責任が発生した後に、賠償責任額を事後的に軽減する方法(会社法425条及び同法426条)は、取締役の対会社責任を追及する訴訟が提起される前の段階、訴訟が係属中の段階、訴訟が終結する段階の各場面において、制度構造上の問題が存在するため、実際には機能しない制度となっている。対して、取締役の対会社責任が発生する前に、賠償責任額を事前的に軽減方法(会社法427条)のほうが制度設計として優れており、現在、多くの上場会社において導入されている。しかし、当該事前的な責任軽減方法は、その適用対象の範囲が限られ、会社の日常の経営を担う業務執行取締役には適用されない。そのため、責任軽減制度(会社法425条~427条)は、業務執行取締役にとって実質的に利用できないものになっているとの認識に至った。以上のことから、責任軽減制度の立法趣旨である経営の萎縮の防止及び経営者となる人材の確保を達成するためには、これらの問題点の解決が望まれるとの結論に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度に本研究を完了させる予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、所属機関での講義形式の見直しを行った結果、これに対応するための時間が増え、研究に従事する時間が予定よりも減った。また、年度途中に出産・育児のための休業・休暇を取得したため、これらの期間は研究に従事することができなかった。以上の理由により、当初の研究計画よりも進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は育児休業を取得するため、研究の一時中断を予定している。研究再開後は、研究中断期間中に刊行された、本研究に関連する最新文献のフォローアップを行いながら、当初の計画に従い本研究を完了させる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、予定していた出張を取りやめたことにより、計上していた旅費に余剰が生じた。また、出産・育児のための休業・休暇を取得したため、これらの期間は研究費の支出がなかった。次年度使用額は、研究再開後、休職期間中に購入することができなかった関連分野の図書購入費に充てる。
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