2018 Fiscal Year Research-status Report
Liberalism without liberty: Developments of non-Anglophone liberalism
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17K13677
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
千野 貴裕 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 専任講師 (00732637)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政治思想史 / イタリア政治思想 / グローバル政治思想 / 自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、しばしば暗黙の前提とされている英米型の自由主義と異なる自由主義の系譜を、20世紀前半(1920-40年代)の日本とイタリアの文脈において検討することである。英米型の自由主義は、言論・結社・信教の自由などの個人を基礎にした諸自由を前提とした自由の漸次的発展を志向する。しかし、自由主義はそうした前提に必ず回収されう訳ではないのではないか、というのが本研究の問いであり、この観点から、1920-40年代の日本とイタリアの自由主義者の思想を検討することには、われわれの社会の基礎である自由主義の前提を再考する意義があると考えられる。 本研究の二年目は、まず、一年目に引き続き、同時代を代表する日本の思想家、とくに京都学派に類する思想家たち(西田幾多郎、田辺元、中井正一、三木清、戸坂潤)の自由主義との関係を検討した。他方で、イタリアの同時代の思想であるガエターノ・モスカの議会主義への離反と接近を検討した。彼は、いわゆる自由主義期イタリアにあっては議会を批判し(『政府論』)、ファシズムの支配が成立すると、その擁護に回った(『政治学要綱』第二版)。注目すべきなのは、彼が自身を一貫した自由主義者と規定した上で、議会主義を民主主義と理解していることである。この議論の延長上に、モスカが残した思想史(『政治的諸教説の歴史』)が書かれており、議会批判から擁護への転換と、思想史的叙述の関係をさらに検討する必要が確認された。 また、上記研究の成果として、今年度中に、ケンブリッジ大学でのワークショップ、あるいはアメリカの学会での報告を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度(研究初年度)は早稲田大学に専任教員として着任することとなり、慣れない学務に想像よりも多くの時間を割かざるを得なくなった。2018年度はそれに比して研究の時間をより確保することができた。本研究に関して、類似した研究関心を持つ研究者と組織した「日本思想史研究会」も例会を重ね、会として海外(イギリスorアメリカ)での報告を準備するまでに研究を発展させることができた。 また、出張旅費と英文校正費に関しては、早稲田大学からの補助もあり、予定よりも資料購入を増やすことができたため、多くの資料を検討することができている。英語論文は一本を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本方針としては、上記した研究会を定期的な研究進捗状況確認の里程標としつつ、研究計画に従って研究を着実に進めていく。特記すべきこととしては、第一に、海外での報告(イギリスorアメリカ)を行い、その報告をジャーナル論文(あるいは共著論文)にまとめて、英語で出版する。第二に、ベルギーで本研究に関連した別の報告を行う可能性がある。現時点ではまだ未確定であるが、可能性を最大限に追求するとともに、この報告も論文にまとめるつもりである。第三に、研究会をプラットフォームとしつつ、本研究成果の一部をより大きな枠組みのもとで、編著書として出版できる可能性を探っていく。
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